研究課題/領域番号 |
24370007
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
浅見 崇比呂 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10222598)
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研究分担者 |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
伊集院 久子 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (60398948)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 性フェロモン |
研究実績の概要 |
巻貝が他種個体と同種個体を識別するメカニズムは、先行研究が皆無である。原因は、一般に人工繁殖が困難であり、たとえ可能でも世代時間が数年に及ぶことにある。研究代表者は、累代飼育法に独自の改良を重ね、コハクオナジマイマイとオナジマイマイの世代時間を2ヶ月に短縮し、必要に応じて交尾・産卵させる研究モデルを確立した。本2種が姉妹種であることが分子系統解析から明らかである。これにより、世界に類のない、生殖的隔離機構の生態・行動・遺伝解析が可能な雌雄同体動物を実用化した。性フェロモンの同定はもとより有機合成のプロトコルも、たとえば昆虫類ではほぼ確立されている。ところが上記の理由から、有肺類の性フェロモンの化学特性・生態機能に関する知見は皆無である。本研究の目的は、雌雄同体の有肺類で、交配前隔離の鍵となる性フェロモン分子の構造変異を同定し、産生能と感受能の遺伝システムを検証することにある。性フェロモンを分泌しないコントロールとして、孵化後1ヶ月の未成熟100個体を、2種各々につき供給可能にした。有肺類の性フェロモンは、眼柄(長い方の触角)の根元に隆起するこぶ(頭瘤)から分泌される。固相マイクロ抽出(SPME)法により、頭瘤が隆起した個体から空媒性の物質を抽出した。GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)法により、頭瘤の隆起した成体に特徴的で、かつ2種間で検出ピークが異なる空媒分泌物質を探索した。本2種は夜行性であるため、長日条件(明期16、暗期8時間)の暗期に、赤外線を投影、微速度ビデオ撮影し、未交尾の成熟個体(被験者)の進行方向を個体ごとに記録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性フェロモンの同定はもとより有機合成のプロトコルも、たとえば昆虫類ではほぼ確立されている。ところが上記の理由から、有肺類の性フェロモンの化学特性・生態機能に関する知見は皆無である。本研究により揮発性物質の中に成熟個体に特徴的な物質を初めて検出し、その物質に対する成熟個体の交尾行動に特有の行動を励起することを発見したため。
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今後の研究の推進方策 |
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で頭瘤組織からの溶媒抽出物を分析し、GC/MSで同定された物質と対応する分画を探索する。この分画を濃縮し、性フェロモン活性を生物検定する。雑種F1世代の性フェロモン産生能と感受能を個体ごとに検定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイオアッセイのシステムを予備的に自作した結果、成熟個体に特徴的な物質の絞り込みが予測されたよりも効率的に進行し、当初見込んだよりも暗化に研究が進んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
統計解析に不可欠の左右対称なY字管を用いた左右均等な気流を維持できるバイオアッセイを実現するための費用として平成27年度請求額と合わせて使用する。この成果をもとに、生理活性物質が性フェロモンであることを立証し、種間変異がどのようにして進化したのかをつきとめる。
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