研究課題/領域番号 |
24370008
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
土田 浩治 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (00252122)
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研究分担者 |
三浦 徹 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (00332594)
佐々木 謙 玉川大学, 農学部, 准教授 (40387353)
高橋 純一 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (40530027)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳内アミン / 幼若ホルモン / 産卵ワーカー / 越冬女王 / 遺伝子発現 / フタモンアシナガバチ |
研究概要 |
平成25年度は、フタモンアシナガバチの(1)脳内アミンの定量と(2)JH(幼若ホルモン)の定量を引き続き行った。実験には、ワーカー羽化前の女王、ワーカー羽化後の女王、産卵ワーカー、非産卵ワーカーの4つのカテゴリーについて行った。脳内アミンについては、これまでに、産卵ワーカーと非産卵ワーカーについて行い、そのアミン量の違いを定量してきた。平成25年度は、新たに、ワーカー羽化前の女王とワーカー羽化後の女王について定量を行った。その結果、ワーカー羽化前の女王はワーカー羽化後の女王と同様に、ドーパミン量が産卵ワーカーや非産卵ワーカーよりも高い傾向が認められた。しかし、ワーカー羽化前の女王の量が個体間でばらついていた。このことは、ワーカー羽化前の女王は、完全に越冬から覚醒しておらず、そのため、ドーパミン量が低い状態の個体が含まれていたものと考えられた。ワーカー羽化後の女王のドーパミン量は高く、産卵ワーカーよりも高いレベルで維持されていた。これらの結果は、巣の創設前の越冬女王が、創設に成功し、ワーカーを生産できる様になる過程には、ドーパミンの上昇がパラレルに働いていることを示唆している。JHの定量では、先の4つのカテゴリーについてサンプルを作製した。JH定量には体液が17ul必要であることが予備実験で判明したので、各カテゴリーについて、その量になる様に3から4個体の体液を混合した。同時に解剖して卵巣状態のチェックを行った。現在、北海道大学でJH定量中である。以上のサンプル調整には約100コロニーの個体を使用し、JH定量用の個体の頭部は、全て、液体窒素で固定し、-80℃で保存した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内アミンの定量は、予定通りに進み、予想通りの結果を得ている。追加の実験として、コアシナガバチの産卵ワーカーと非産卵ワーカーについて脳内アミンの定量を行う予定である。JHの定量については、一昨年度までの予備実験の結果を踏まえ、17ulの体液が最も定量しやすい量であることが判明した。昨年度はその実績を踏まえて、サンプルを調整した。また、体液の抽出方法にも改善を加えた。一昨年度までは、胸部を切開し、そこにマイクロキャピラリーを差し込んで体液を浸透圧によって採集したが、採集効率が悪く、1個体から十分なサンプル量が得られなかった。そこで、昨年度は頭部を切除した個体の、切除部分と腹部末端を接着剤で封入し、さらに腹部に切れ目を入れて5000rpm/sの条件で遠心することで、体液の摂取量を増やすことが可能となった。これにより、予定したサンプル数の9割方のサンプルを得ることができた。遺伝子発現については、予備実験を行い、充分に定量可能であることが判明した。飼育したコロニーは巣上の個体を全て個体識別し、巣上の行動をビデオカメラで記録した。
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今後の研究の推進方策 |
脳内アミンの定量については、フタモンアシナガバチの予定したカテゴリーについては全て終了したので、コアシナガバチについて追加実験を行う予定である。JHの定量については、現在4つのカテゴリーについて分析を進めているところであり、その不足分を、本年度新たに飼育コロニーを設けて、サンプル調整をして、分析する予定である。特に、本年度は、ワーカーの日令とJH量の変化を明らかにしたい。ワーカーの0日令、4日令、8日令、16日令の4つのカテゴリーについて、JH濃度と日令および卵巣の発達度の関係を明らかにしたい。遺伝子発現については、本年度集中的にとり組む予定である。特にforaging遺伝子、インスリン関連遺伝子など、既にこれまで、ミツバチやPolistes metricusでワーカーの分業やカースト間の行動の違いに影響を与えていると考えられている遺伝子を中心に分析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度に、遺伝発現実験を集中して行うために、その分の資金を繰り越した。 繰り越した実験用の物品費として確保した。
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