研究実績の概要 |
フタモンアシナガバチの、創設女王(F; foundress)、女王(Q; queen)、産卵ワーカー(RW; reproductive workers)、非産卵ワーカー(NRW; non-reproductive workers)の4グループに分けて、体液を回収し、JH濃度を測定した。その結果、QとRWのJH濃度が最も高く、NRWがその次に低く、Fは最低の濃度であった。これは、FとNRWは、解剖をしてもそれ程卵巣が発達していないことと矛盾しておらず、本種では、JH濃度が卵巣発達とパラレルに変化しており、性腺刺激作用を有していると考えられた。また、頭部から、RNAを抽出した。RNAは先の4グループに加えて、新女王(G; gyne)を加えて分析した。分析に用いた遺伝子はmalv, Vg, ILR2, for, TOR, USPの6遺伝子である。これらの遺伝子について定量的PCR法で脳内の遺伝子発現量を定量した。これらのデータを元に、MANOVAで分析し、その結果を基に、UPGMA法でデンドログラムを作成した。その結果、女王は他の4グループと異なるグループに入ることが明らかとなった。また、残りの4グループでもFとNRWが同じグループ、RWとGが同じグループに入った。一般に、社会性昆虫では、産卵ワーカーは、(1)チーター(裏切り者)である、(2)インターカストである、の2つの可能性が考えられてきた。今回の結果では、RWがQとは大きく離れてグルーピングされたことから、RWの遺伝子発現はQとは全く異なっており、インターカストである可能性を示唆していた。この結果はこれまでの体表炭化水素の結果と矛盾していなかった。
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