研究課題/領域番号 |
24370010
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30380281)
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研究分担者 |
中野 伸一 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (50270723)
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
岩田 智也 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (50362075)
大手 信人 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10233199)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リン循環 / 微生物膜 / 栄養循環機能 / 生物多様性 / リン酸-酸素安定同位体 / 土地利用様式 / 栄養塩輸送モデル / スパイラルメトリクス |
研究概要 |
本研究は、琵琶湖流入河川を対象として、集水域の土地利用改変に伴う河川生態系の栄養環境の撹乱が生物多様性に及ぼす影響、および、生物多様性が生態系の栄養循環機能に果たす役割を解明することを目的とした。平成24年度は、人為撹乱規模の大きな野洲川にて調査を実施した。 1)栄養撹乱に対する生物応答の評価 河川全域30地点にて、河床の細菌、微細藻類、底生動物の定量採集を行った。また、栄養環境に対する微生物膜の細胞外酵素活性の生態化学量論的応答性と群集組成の変化を調べるために、野外微生物培養実験を実施した。微生物酵素活性は、個々の物理・化学環境要因によって説明できないが、土地利用様式に応じて地点間で変異した。また、土地利用様式によって微生物は異なる生態化学量論的応答性を示した。 2)栄養塩輸送モデルの構築 河川全域76地点にて、全窒素・全リンフラックスを計測した。また、観測値をもとに栄養塩輸送モデルを構築し、各地点のN・P原子のスパイラルメトリクス(U、vf、Sw)を推定した。N・P原子の取り込み速度Uは森林河川で極端に低く、農地・市街地河川で高かった。また、除去効率(vf)も農地・市街地河川で高い値を示した。一方、平均流下距離Swは下流河川ほど長くなり、河川本流の下流域に流下した窒素とリンの多くは河川生物に取り込まれることなく琵琶湖に流入することが明らかとなった。 2)リン酸-酸素安定同位体(δ^<18>O_p)分析技術の開発 外部リン負荷源の同定と微生物によるリン循環機能を評価するためにδ^<18>O_p分析技術を開発した。河川水中の溶存態無機リン酸を抽出し、リン酸銀に精製して熱分解型同位体質量分析計によりδ^<18>O_pを測定した。潜在的リン負荷源となりうる様々な試料を収集・分析したところ、個々のリン源は明瞭に異なる同位体情報を示し、外部リン負荷源の寄与率推定に有用なツールとなりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン酸-酸素安定同位体分析技術を確立できたことにより、河川生態系におけるリンの外部負荷源の特定と生物によるリン循環機能を評価するという本研究の目的の第一段階をクリアすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
安定同位体分析と栄養塩輸送モデルによって評価された河川生態系の栄養循環機能と生物多様性の関係を解析するために、各種分類群の種組成データの解析を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、人為的撹乱の大きな流入河川である野洲川と対照的に、人為的撹乱規模が相対的に小さい安曇川を対象として、同様のデザインの調査を実施する。
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