生物は野外において競争者や餌、捕食者などさまざまな他種と相互作用をし、進化・表現型可塑性・行動選択によって適応し、環境を自らに適応的なものへと改変させる。互いに深く関連した生物群とそれらの物理環境を含めたシステムを生態系もしくは生物圏という。具体的には次の3つの視点に立った研究を集中的に行うことが目的であった。 (1)生態系を構成する種の生活史適応とその生態系インパクトの研究:海洋生物の多様な性表現について動的最適化を含むゲームとして捉えた理論を展開した。とくに矮雄の出現条件やフクロムシの幼生の性決定(母親によるものと幼生が定着した環境によるもの)、さらにカイメンに閉じ込められたカイロウドウケツエビの性表現などについての理論的研究で成果をあげた。 (2)種分化速度についての新しいモデルの展開:地理的に隔離されているがごくまれに移住が見られるという複数の島状生息地において、種が新たに形成されてくるプロセスについての理論的展開を行った。 (3)ヒトの選択動態と生態系動態の結合ダイナミックスの研究:熱帯林では伐採の大部分が違法に行われている。これを進化ゲーム理論として初めて展開した。 すべて論文として出版した。
|