研究課題/領域番号 |
24370016
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研究機関 | 国立研究開発法人港湾空港技術研究所 |
研究代表者 |
桑江 朝比呂 国立研究開発法人港湾空港技術研究所, その他部局等, チームリーダー (40359229)
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研究分担者 |
一見 和彦 香川大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70363182)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 行動生態 / 海洋生態 / 食物網 / 進化生態 / 群集生態 |
研究実績の概要 |
干潟堆積物表面に存在するバイオフィルムが小型シギ類の主要な食物源となっていることが,これまでの研究によって初めて明らかにされ,干潟生態系の食物網構造においてパラダイムシフトが起きた.鳥-バイオフィルムの直接的なリンクを扱うこの新たな研究分野を生態学の中心的課題である食物網研究につなげていくため,本研究では,最適採餌理論ならびに個体レベルの形質の適応進化の観点からシギ・チドリ類におけるバイオフィルム採餌が整合的に説明できるか,生態学・生理学・形態学・系統学を融合した現地調査・実験・解析から実証することを目的とする.
鳥類が適応的な採餌行動を示すかどうかについて,最適採餌理論と実測データとの突き合わせから整合性を検証するためのデータを取得した.今年度は特に,鳥類の採餌場所,採餌個体数,そして餌密度の空間分布を空中撮影によって定量化するための手法を検討した.バイオフィルムの構成成分(藻類など)について解析するため,現地でバイオフィルムを採取した.また,その他の餌生物のCN含有量や熱量を測定し熱量モデルを用いて解析するため,現場で餌生物を採取した.数十kmの空間スケール内に存在する各干潟における小型シギ類のバイオフィルム依存度の空間分布に関する論文を公表し,ヒメハマシギにおけるバイオフィルム依存度が22~53%であることを示した.
餌選択と食物網影響に関する実証実験のため,シギを捕獲し,港湾空港技術研究所内にある干潟メソコスムに放鳥し,飼育を継続した.そして,メソコスム内の生物量,給餌量,放鳥体重などのデータを経時的に取得した.さらに,餌生物,給餌料,そして鳥糞の安定同位体比を測定し,各食物源の寄与率を推定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するためのデータ,すなわち,個体ごとの形態(棘毛エリア,体長,体重),餌生物のCN含有量や熱量など,が順調に取得できている.また.餌選択と食物網影響に関する実証実験(干潟メソコスムへの放鳥実験)も順調であるため.
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今後の研究の推進方策 |
また,現地観測から得られたデータを解析し,バイオフィルム採餌においても,鳥類が適応的な採餌行動を示すかどうかについて,最適採餌理論との突き合わせから整合性の検証をすすめる.さらに,餌選択と食物網影響に関する実証実験のため,干潟メソコスムおける放鳥実験を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年に,海外で現地調査を実施する計画が新たに発生し,その資金を確保するため.
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次年度使用額の使用計画 |
主として下記の使途に使用する予定である.(1)現地観測旅費,(2)打ち合わせ旅費,(3)現地観測・室内分析用消耗品
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