研究課題/領域番号 |
24370018
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
上村 松生 岩手大学, 農学部, 教授 (00213398)
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研究分担者 |
河村 幸男 岩手大学, 農学部, 准教授 (10400186)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞膜 / マイクロドメイン / 低温応答 / 脂質組成 / タンパク質組成 |
研究概要 |
低温馴化後の凍結耐性と細胞膜脂質組成が大きく異なる2種のイネ科作物(ライムギ、カラスムギ)を用いて、低温馴化前後における細胞膜及び細胞膜マイクロドメインのプロテオーム解析とリピドーム解析を実施した。その結果、種間や低温馴化能力の違いが細胞膜マイクロドメインのタンパク質および脂質組成に強く関連していることを示唆する結果を得た。さらに、低温馴化過程において細胞膜マイクロドメインで誘導されるエンドサイトーシスに関連するダイナミン様タンパク質(DRP1E)発現が欠損あるいは恒常的に発現しているシロイヌナズナ変異体を用いて、凍結耐性、細胞の凍結挙動を調査するとともに、DRP1Eの組織および細胞内分布などを調べた。その結果、DRP1E欠損株は低温馴化後の凍結耐性が野生型より低いこと、欠損株にDRP1E野生型遺伝子を組み込むことによって欠損株の凍結耐性は野生型と同程度まで戻ることなどを明らかにした。また、生化学的および細胞学的に解析によりDRP1Eタンパク質は細胞膜に局在していることも観察できた。 一方、特異的ステロール除去剤(メチル-β-シクロデキストリン:MβCD)により細胞膜ステロール脂質を除去、あるいは、含量低下させた場合の細胞の凍結耐性、凍結融解過程における細胞膜の挙動、さらには、細胞膜マイクロドメインタンパク質の局在に対する影響を調査するための実験条件を検討したが、条件確立までには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜リピドームおよびプロテオームと低温馴化機構や凍結耐性との関連については予想以上にデータを得ることができた。また、マイクロドメインタンパク質DRP1Eが果たす凍結耐性獲得機構への役割についても、実験的に検証することができた。しかし、マイクロドメイン構造維持に関する脂質の役割を検討する実験系については、ストロール脂質除去剤であるメチル-β-シクロデキストリン(MβCD)の細胞膜への効果を引き出せる条件検討に手間取っている。従って、総合的に判断して、上記のような達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はメチル-β-シクロデキストリンの作用条件の検討を続け、条件確立ができた時点で本格的な研究を開始する。一方、マイクロドメイン内外で特異的な分布を示すタンパク質群(GPIアンカー型タンパク質)の解析を進めており、得られた結果は細胞膜マイクロドメインの構造や機能に関する有益な知見を与えてくれるものと考えられる。さらに、リン酸化プロテオームの解析も合わせて行う予定にしており、この結果も細胞膜マイクロドメインが果たす信号伝達経路への役割などを考える上で興味深い知見を与えてくれると考えられる。
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