研究課題/領域番号 |
24370021
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷 俊治 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00127276)
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研究分担者 |
池上 貴久 横浜市立大学, 生命医学研究科, 教授 (20283939)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 葉緑体 / レドックス代謝 / フェレドキシン / 酸化還元酵素 / 分子間相互作用 |
研究実績の概要 |
(1)フェレドキシン(Fd)と亜硫酸還元酵素(SiR)の分子間相互作用には、これまで明らかにしてきた静電力によるものに加えて、非電荷アミノ酸残基が関与する部分も相当あることが分かった。特に、SiR側のFdとの相互作用領域に存在する疎水性アミノ酸の置換体の解析からFdとの相互作用力は維持しつつ、酵素反応特性が変化する場合があることが実験的に示された。Fdからの電子の授受が何らかの形で酵素反応における基質認識に関与する可能性が考えられた。 (2)FdとFd:NADPH酸化還元酵素との分子間相互作用にも、Fd側の非荷電性のアミノ酸領域が重要な役割を果たしていることを、Fdの系統的変異体を用いて示した。特に、熱測定やNMR解析によい、非静電的相互作用の熱力学的理解が進んだ。この成果は論文投稿中である。 (3)FNRの基質であるFdとNADP(H)は、互いに負の協働性を有しており、一方の濃度が高まりFNRと強く結合すると、他方とFNRの結合力は弱まる関係にある。この負の協働性を詳しく解析し、その現象が生じるFdとFNRの濃度は生理的な濃度域にあり、葉緑体内でのこの現象が起こる可能性を示した。FNRの各種の部位特異的変異体を用いて、NADP(H)の2’5’ADPのリン酸が結合する部位のFNR変異体が負の協働性を大きく損なわれることを見出した。これはNADP(H)の2’5’ADPのリン酸がFNRに結合すると、そこから遠く離れたFdとの相互作用部位に何らかの構造変化を誘起するアロステリック効果のような現象が起こるのではないかと想定される。 (4)Fdファミリーに属するFdC2分子の緑葉内での発現や分布を詳しく解析し、この分子は葉緑体の分化・発達が盛んな部位で多く蓄積することを見出した。この結果は、FdC2ha光合成の電子伝達に直接かかわるよりは、葉緑体の生合成に関与する可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FNRの生理機能の特徴であるFdとNDPHとの負の協同性について研究が進展し、研究成果の概要に記載した通り、FdとFNRの弱い分子間相互作用の構造基盤を明らかにすることができた。また、Fdの電子キャリアーとしての特徴を反映した亜硝酸還元酵素や亜硫酸還元酵素の活性発現の特徴を明らかにし、論文として公表した。これらの成果により、おおむね順調に進展しているとの自己評価にした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたるので、研究の取りまとめに注力するとともに、これまでの成果を論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は研究員の雇用がなかっため、当初予定の人件費は使用せずに平成27年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に研究員の雇用を開始した。その費用に充当する。
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