研究課題
フェレドキシン(Fd)は、[2Fe-2S]クラスターをもつ電子キャリアータンパク質であり、葉緑体の還元同化反応を司る多様な酵素群への電子供与体として働いている。Fdとこれらの酵素群との間では効率的な電子の授受が行なわれており、これは両者が電子伝達複合体を形成して分子間の電子移動に適した分子環境を作り出しているためである。これまでFd:NADPH酸化還元酵素(FNR)及び亜硫酸還元酵素(SiR)とFdとの2種の電子伝達複合体の立体構造を決定したので、最終年度は酵素活性や複合体形成の物理化学的特性を包括的な理解に注力した。結果を以下に記す。1)複合体中ではFdの[2Fe-2S]クラスターは、FNRのフラビンおよびSiRの[4Fe-4S]クラスターとの距離が6から10オングストローム程度に近接しおり、電子移動の媒体になるような構造は認められないので、トンネル効果による電子移動が主要であると結論した。2)FdとFd-依存性酵素との分子間相互作用に着目して、部位特異的変異体の生化学的解析を行った。Fd側の酸性残基群と酵素側の塩基性残基群の網羅的改変により静電力の寄与の重要性を確認し、特に酵素側の改変が電子授受の大きな低下を引き起こすことが判明した。3)Fdと酵素の接触部位に存在する非荷電性残基や疎水性残基の改変では、一律的な酵素反応の変化や複合体の親和力の低下は認められず、非静電的な相互作用力は複合体の最適構造の形成に寄与する微調整の役割を果たしていることが示唆された。4)等温滴定熱測定法で複合体形成の熱力学的パラメーターを求めたところ、Fd/FNRとFd/SiRいずれの場合も自由エネルギーが減少するが、前者は吸熱反応後者は発熱反応であり、複合体形成の熱力学特性に違いがあることが判明した。複合体形成時にFNRの場合は構造変化が誘起され、一方SiRの場合は大きな変化はないことが、この観察と関連するものと現時点では推察できる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Agronomy
巻: 6 ページ: 12
10.3390/agronomy6010012
J. Biochemistry
巻: in press ページ: XXX
10.1093/jb/mvw016
10.1093/jb/mvw004
Biochemistry
巻: 54 ページ: 6052-6061
10.1021/acs.biochem.5b00601