研究課題
基盤研究(B)
1.RKD遺伝子の多重変異体の作製と胚における表現型の解析:5つのRKD遺伝子のすべてにT-DNA挿入変異体が存在するが、rkd4以外の単独変異体に顕著な異常は見られない。これら5つの左盟遺伝子の発現パターンについては、レポーターラインを用いて解析済みであるが、mo1の発現はごく初期にはRKD4と一部重複し、RKD2,3,5の発現は互いに酷似している。この観察結果はRKD遺伝子間の機能重複を示唆する。昨年度までにRKD遺伝子間の多重変異体の作製を試みているが、従来のrkd2変異体を用いて交配した場合、後代において異常な分離比が観察される問題が生じた。そこでSalk InstituteのEckerらが新たに同定した変異体をストックセンターから取り寄せ、これを用いて交配を繰り返している。2.RKDタンパク質機能の保存性:RKD4以外の3つのシロイヌナズナRKD遺伝子のそれぞれを、RKD4プロモーターの下流につなぎ、rkd4変異体に導入した。その結果、RKD2を発現させた場合にのみ、rkd4の胚発生異常が相補された。このことからRKD2がRKD4と共通した機能を持つ一方で、他の3つのRKD遺伝子産物の機能はRKD2やRKD4とは異なっていることが示唆された。また、陸生植物の進化の基部に位置するゼニゴケのゲノムに、RKD4の相同遺伝子が1つ存在していることを見出した。この遺伝子を相同組換え系と用いてノックアウトしたところ、生殖器官や無精芽の発生異常が見られた。またin situハイブリダイゼーションにより、この遺伝子が卵細胞で強く発現していることがわかった。以上の結果は、個体発生初期におけるRKD遺伝子の機能が、進化的に高度に保存されていることを強く示唆している。
2: おおむね順調に進展している
rkd変異体の交配実験は後代において異常な分離比が見られて遅延しているが、これは実験上の問題ではなく、生殖や初期胚発生の過程におけるRKD遺伝子の未知の重要な機能を意味している可能性があり、新たな研究展開の端緒ととらえることもできる。ゼニゴケRKD相同遺伝子については、24年度に新たに始めたプロジェクトであるが順調に進展し、RKD遺伝子が進化的に高度に保存された機能を持つことが明らかになった。
他の植物種からのRKD相同遺伝子の単離と機能解析進める。また、RKD4の誘導的過剰発現株を用いた初期化細胞ラインの確立と同調胚発生系を樹立し、胚内区画の細胞ソーティングの系の作製について検討する。
今年度は物品費が予想よりも少なくて済んだことで助成金に余裕が生じた。次年度は研究補助員の雇用に多くの費用をかけ、効率的に研究を進めてゆく予定である。
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Plant J.
巻: 73 ページ: 357-367
10.1111/tpj.12049
Plant Cell Physiol.
巻: (in press)
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http://bsw3.naist.jp/nakajima/