研究課題
ABAのシグナル伝達においてタンパク質のリン酸化は中枢に位置しており、タンパク質脱リン酸化酵素PP2Cは重要な制御因子の一つである。本課題研究では種子特異的ABA関連PP2C、AHG1, AHG3に注目し、これらの制御機構やリン酸化プロテオーム解析を進めている。これまでの研究からAHG1およびABI5とAHG1結合タンパク質の相互作用を確認している。これら2つの因子の結合が分けられるかどうか調べる目的で、AHG1結合タンパク質にランダムに変異を導入し、AHG1, ABI5それぞれの結合に影響する変異を探索した。その結果、それぞれの結合に別個に必要なアミノ酸を同定することに成功した。更に、AHG1, ABI5, AHG1結合タンパク質をプロトプラスト細胞で発現し、ABA応答性遺伝子の発現応答を検討したところ、結合変異型のAHG1結合タンパク質は遺伝子発現において顕著に影響をおよぼすことを明らかにした。また、プロテアソーム関連変異ahg12の変異株において、ホルモン応答関連転写因子が蓄積しやすいことも明らかにした。AHG1やAHG3の変異体を用いてリン酸化プロテオーム解析を行い、種子特異的なタンパク質リン酸化ネットワーク解明を進めている。当該年度は、ahg1,ahg3,あるいはsrk2dei三重変異体を大規模に栽培し、リン酸化プロテオーム解析必要量の種子を確保した。得られた種子について、ABA含有培地における発芽試験を行い、ahg1およびahg3についてはABA高感受性、srk2deiについてはABA非感受性の表現型を確認した。また、シロイヌナズナ種子からのリン酸化タンパク質抽出条件を検討するとともに、タンパク質のトリプシン消化や脱塩操作、リン酸化ペプチド濃縮カラム等の実験系を立ち上げ、LC-MSによるリン酸化プロテオーム解析の前段階の準備を完了した。
3: やや遅れている
種子特異的PP2Cの制御の一端を把握することが出来た。しかし、その後の解析ついては、形質転換植物の作成に時間がかかっている。リン酸化プロテオーム解析技術を植物体のABA応答の研究に適用し、成果を得ることに成功したが、本研究の目的の一つであるシロイヌナズナ種子のリン酸化プロテオーム解析を行うための材料準備がやや遅れている。
当初の計画通り、形質転換植物や材料の準備ができ次第シロイヌナズナ種子におけるリン酸化プロテオーム解析を進める。
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Nature Communications
巻: 4 ページ: #2247
10.1038/ncomms3247
Science Signaling
巻: 6 ページ: rs8
10.1126/scisignal.2003509
http://www.tuat.ac.jp/disclosure/pressrelease/2012_20130409122803/20120516161219_20130409123637/index.html
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id86.html