研究概要 |
ジャガイモそうか症病原菌Streptomyces turgidiscabiesと帯化病原菌rehodococcus fasciansがもつFAS酵素群(FASI-FAS6)と、その上流にコードされる酵素(MT1,MT2)の機能を明らかにし、植物病原菌の生産する新奇サイトカイニンとその機能を同定するために以下の実験を行った。 S.turgidiscabiesの植物への感染実験を可能にするため、thaxtomin合成に関わるNOS遺伝子の破壊株(nos^-)の作成を行った。試行錯誤の結果、放線菌の相同組換え技術を用いてNOS遺伝子に薬剤耐性マーカーが挿入された株の単離に成功した。 この破壊株を文献情報に従いシロイヌナズナに感染させたが、明確なleafy gallの形成は見られなかったため、感染条件の再検討から行うこととした。また、酵素レベルでの解析が進んでいるR.fasciansでも感染実験を行う必要があると判断し、感染実験のための環境整備を行った。 機能未同定のMT1,MT2について、CaMV35Sプロモーターの下流に連結したものをシロイヌナズナに導入し、両遺伝子の過剰発現体を作出した。これらの形質転換体は生育が多少遅れるという表現型を示したが、顕著なものではなく、サイトカイニン活性の変化と関連づけられるものではなかった。また、形質転換植物のサイトカイニン内生量を解析したが、野生型に比べ有意な差はみられなかった。 MTl,MT2の機能については、組換え酵素タンパクを用いたin vitroでの詳細な解析の結果、サイトカイニン合成の基質前駆体であるIPPを修飾することが明らかになった。このことはMTI,MT2の過剰発現シロイヌナズナがサイトカイニン関連の表現型を示さなかったこととも符合していた。 メチル化サイトカイニンについては、FAS4, MT1, MT2の3遺伝子を大腸菌で共発現させたものからメチル化されたサイトカイニンを大量精製した。精製産物をNMR解析し、プレニル側鎖の末端がメチル化されたサイトカインであると構造決定した。また、このメチル化サイトカイニンは生体内でサイトカイニンとしての活性を持つことを明らかにした。
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