研究課題/領域番号 |
24370026
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
榊原 均 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, グループディレクター (20242852)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サイトカイニン / 植物病原菌 / 植物ホルモン / 代謝 |
研究概要 |
Streptomyces turgidiscabiesのNOS遺伝子の破壊株(nos-)と野生株を用いてタバコへの感染実験を行ったところ、nos-株感染植物の多くでleafy gallの形成がみられた。ただし、gall形成頻度が低く、病兆にもムラが大きかったことから、R. fasciansでの感染実験を行うこととした。R. fasciansの取り扱いが可能な施設内でタバコに感染したところ、2週後に高頻度にleafy gallが形成された。そこでgallを含む植物組織内のサイトカイニン内生量を質量分析器で解析した。その結果、非感染の植物には存在しない、メチル化されたサイトカイニンが検出された。この物質はFASオペロン上流に存在する2つのメチル基転移酵素(MT1, MT2)を用いたin vitroの実験で生成される化合物と質量分析でのスペクトルが一致しており、メチル化サイトカイニンがFASオペロンを含む一連の機能未知の酵素遺伝子群の合成産物の1つであることを強く示唆している。今後はメチル化サイトカイニンのleafy gall形成における役割をより明確にするため、感染後の蓄積量の経時的な変化や内生サイトカイニンとの比較解析が必要である。 R. fasciansのMT1, MT2の機能解析については、基質IPPにはじめにMT1が反応した場合にはモノメチルサイトカイニンが生成され、はじめにMT2が反応した場合には、引き続きMT1が反応し、最終的にジメチルサイトカイニンが合成されることを明らかにした。 FASオペロンの機能については、MT1, MT2, FAS1からFAS6全てを大腸菌内で共発現させたものと1つずつ順に除いたものの培養上精中のサイトカイニン様物質を、高分解能質量分析器で差分解析した。しかしメチル化サイトカイニンとm/z=246の新奇サイトカイニン物質以外に有望と思われる新規サイトカイニン様化合物の検出にはいたらなかった。これまでの解析ではFAS1の機能が全くわかっておらず、この酵素の基質および産物同定が本研究の鍵であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R. fasciansを感染させた植物体から新奇構造のサイトカイニンの検出に成功していること、また、メチル化転移酵素の作用機作を明らかにできたことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はMT1, MT2により作り出されるメチル化サイトカイニンについて、その生体内での安定性やサイトカイニン活性について、従来植物が生産する内生のサイトカイニン分子種との比較を行なう。具体的にはメチル化サイトカイニンを植物に投与後、経時的にその蓄積量を定量解析する。また、植物のサイトカイニンオキシダーゼを酵母発現系で調製し、メチル化サイトカイニンの反応性を検討する。 植物にR. fasciansを感染させたのち、植物体内におけるメチル化サイトカイニンの蓄積量の変化を解析し、感染後のどのステージでこのメチル化サイトカイニンの合成が盛んであるかを特定する。また、植物内生のサイトカイニン代謝に与える影響を評価する。 残りの機能未同定遺伝子であるFAS遺伝子群(FAS1からFAS6)についても、引き続き組換え酵素タンパク質を用いて機能同定を試みる。すでにFAS1以外の酵素群でm/z=246の新奇サイトカイニン様化合物が合成されること、さらにMT1, MT2によりその化合物にメチル化が起こることを確認していることから、FAS1によるさらなる修飾反応に焦点を絞り解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費の使用が当初計画よりも少なかったため残額が生じた。 小額であるため、次年度の旅費の一部として使用する。
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