研究課題/領域番号 |
24370027
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
笠原 博幸 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (00342767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物ホルモン / オーキシン / インドール-3-酢酸 / フェニル酢酸 / 生合成 / 代謝 |
研究概要 |
オーキシンは植物の生長や環境応答の制御において重要な役割を果たす植物ホルモンであり、これまで最初に発見されたオーキシンであるインドール酢酸(IAA)を中心に研究が行われてきた。最近、申請者らはフェニル酢酸(PAA)がIAAと共に合成されるもう一つの天然オーキシンであることを発見した。本研究ではPAAの生理的役割の解明を目的として、遺伝学的および生化学的な手法によりPAAの作用機構の解析を進めている。 まず、今年度の研究計画に従って、PAAの生理的役割を解析するために重要なPAA欠損変異体を作成するため、高度好熱菌T. thermophilusのpaaK(PAA-CoAリガーゼ:PAA代謝酵素)遺伝子をエストラジオール誘導型発現ベクター(pMDC7)に組み込み、シロイヌナズナを形質転換、そのT2種子の回収まで終了した。今後、ホモ接合体の選抜、paaKの遺伝子発現の確認、PAAとIAAの内生量の分析、表現型の解析を進める。 また、PAAの生理的役割を解明するため、PAAを選択的に不活化する、あるいはIAAの不活化を選択的に促進する代謝酵素の探索を進めた。酵母を使った活性スクリーニングの結果、シロイヌナズナのUDP-グルコシル転移酵素ファミリーから複数のPAAグルコシル化酵素を同定した。また、この活性スクリーニングによりIAAの主要な代謝物である2-Oxindole-3-acetic acid(OxIAA)のグルコシル転移酵素(UGT74D1)を同定した。シロイヌナズナのugt74d1欠損変異体の機能解析の結果、この遺伝子がシロイヌナズナの主要なOxIAAグルコシル化酵素であることを示した。この結果はPlant Cell & Physiologyに掲載された。 PAA生合成の予想中間体であるフェニルピルビン酸(PPA)のLC-MS/MS分析法の確立も並行して進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にYUCCAフラビン含有モノオキシゲナーゼがインドール-3-酢酸(IAA)とフェニル酢酸(PAA)を合成する仕組みを解析し、その詳細な酵素反応機構を論文で発表した(J Biol Chem, 2013)。今年度はPAAを選択的に代謝するグルコシル基転移酵素(UGT)を探索し、新規酵素をシロイヌナズナから複数同定した。これにより、当初予定していたpaaK遺伝子以外にも、PAAの生理的役割を解明するために重要な代謝酵素遺伝子を新たに獲得した。また、その過程でIAAの主要代謝経路の鍵酵素UGT74D1も新たに同定し論文で発表した(Plant Cell Physiol, 2014)。
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今後の研究の推進方策 |
PAA代謝酵素であるpaaKおよびPAAグルコシル基転移酵素の過剰発現体をシロイヌナズナで作成し、これにより得られるPAA欠損変異体を使ってPAAの生理的役割を明らかにする。また、新たに得られた複数のグルコシル基転移酵素の基質特異性などについても解析を進める。さらに、PAA生合成経路の全容解明のため、PAA生合成中間体の高感度質量分析法の確立を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究支援員を1名採用する予定であったが、研究費が予定額に達しなかったため研究支援員を採用できなかった。そのため研究支援員なしの研究計画に変更して進めているため。 次年度にPAAグルコシル化酵素の遺伝学実験および生化学実験で使用する。
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