ヒトも含めて雌雄異体の全ての脊椎動物では、受精時に決定した性は生涯にわたり変わらないと考えられてきた。本研究では、メダカを用いて、成魚の雌雄生殖腺の性的可塑性について解析した。成熟雌魚の卵巣エストロゲン合成を阻害すると、卵巣部分は退化して精巣が形成され、精子形成が進行して妊性のある精子がつくられた。一方、生後3か月の成熟途上にある雄魚をエストロゲン処理すると、精巣部分は退化して卵巣が形成され、妊性のある成熟卵がつくられた。これら雌雄成魚の生殖腺周辺部には、生殖幹細胞とそれを取り囲む未分化生殖腺体細胞が存在し、これらがエストロゲンの有無に反応して生まれつきとは異なる性の生殖腺となると結論された。
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