研究課題/領域番号 |
24370030
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水波 誠 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30174030)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 昆虫 / 学習 / ブロッキング / 習慣形成 / 記憶 / コオロギ / 古典的条件付け |
研究概要 |
研究代表者は、昆虫の学習に哺乳類の学習と類似した過程が含まれることを見出し、新規学習モデルMizunami-Unokiモデルを提案した。さらに最近、このモデルは、昆虫の学習が、従来無脊椎動物で報告されてきた学習過程と哺乳類で知られてきた学習過程の両方を含むこれまで知られていなかったタイプの学習であることを示唆していることが明らかになってきた。本研究の第1の目的は、「ブロッキング」や無条件刺激価値引下げなどの高次学習現象に関するモデルの予測を実験的に検証し、昆虫の学習の本質に迫ることである。本年度は、1)プロッギングに関する行動薬理学的解析、および)無条件刺激価値引き下げ実験による「学習行動の習慣化の検証」の2つの課題において、重要な成果が得られた。 1の課題に関して、前年度の研究によりコオロギがブロッキングを示すことは明らかになったが、ブロッキングを説明する学習理論として報酬予測誤差仮説と選択注意説の2つが提案されている。1-trial compound conditioningを用いた実験によりどちらの説が妥当か調べた結果、コオロギのブロッキングは選択的注意説では説明できないことが明かになった。そこで、我々が提案するMizunami-Unoki学習モデルを「報酬予測誤差による学習」仮説と合致するように改変した。このモデルは「auto-blocking」という新規の学習現象の存在を予測する。この現象の実験的な確認が次年度の課題となる。 2の課題に関して、繰り返し訓練による「学習行動の習慣化」が成立しにくい匂いがある可能性を検討するため、2組の匂いでの結果を比較したところ、いずれの組の匂いにおいても「学習行動の習慣化」が成立することが明らかになった。この結果により、学習行動の習慣化がコオロギの匂い学習において一般的な現象であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度取り組んだ主要な課題において、いずれも当初の目的を上回る成果を得た。特にMizunami-UnokiモデルをRescorla-Wagner model(報酬予測誤差仮説)と融合させた新規モデルの提案という大きな成果が得られた。このモデルは重要な予測を新たに生み出しており、今後の研究展開を大きくリードするものと期待できる。一方、当初目標としてきた学習のニューロン機構の解析の準備はやや遅れぎみであるが、その点を考え合わせても、計画で想定した以上の達成度であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度(最終年度)には、我々の新規モデルが予測する「auto-blocking」の実験的な検証を行う。また報酬学習だけではなく、罰学習にも予測誤差仮説があてはまるのか、また罰学習の予測誤差の情報伝達にはドーパミンニューロンが関わるかについて調べる。更に学習のニューロン機構の解明のための研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の一部(ドーパミンの免疫組織化学)が次年度にずれこんだため、若干の繰り越しが生じた。 26年度における消耗品代の一部として使用する。
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