本研究では、3つの重要な成果がえられた。第1に、コオロギで「ブロッキング」と呼ばれる重要な学習現象が成立することがわかった。ブロッキングを説明する理論として報酬予測誤差仮説と選択注意説の2つがあるが、コオロギのブロッキングは「報酬予測誤差」によるものであることがわかった。第2に、過剰な訓練を行うと報酬や罰の経験の想起なしに学習行動が遂行されること、すなわち「学習行動の習慣化」が起こることがわかった。第3に、ゴキブリのキノコ体垂直葉のニューロンの一部が、学習による匂い応答の変化を示すことが明らかになった。これらは水波―宇ノ木学習モデルを大きく展開し、またその神経基盤に迫る成果であった。
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