研究概要 |
研究開始時の打ち合わせに従って,以下の準備・研究を行った. (1)100遺伝子座の配列決定用の材料として,国内(四国,九州)および国外(グアム島)において採集を行い,101種251サンプルをアルコール・冷凍保存した. (2)首都大学東京と愛媛大学で維持されている飼育系統(cDNA配列決定用)と上記のサンプルを加えて北海道大学で冷凍保存されているサンプル(100遺伝子座の配列決定用)から,ショウジョウバエ科の骨格系統を代表するそれぞれ23種,66種を解析候補種として選定した. (3)上記の候補種の中から,まず,アカショウジョウバエ(Drosophila albomicans)のcDNA配列を,次世代シーケンサを用いて決定した. (4)100遺伝子座配列決定の遺伝子選定とプライマー設計の戦略を立てるために,アカショウジョウバエのcDNA配列の中からオーソロジーの明らかな33の単一コピー遺伝子を選び,公開されている12種ゲノム配列データとともにアライメントし,保全性の高い部分にPCRプライマーを設計した.PCRの結果,6遺伝子がquinaria sectionの8種中,6種以上について配列の増幅に成功した. (5)ショウジョウバエ(Drosophila)亜属のquinaria sectionに属する8種群,およびこれに形態学的に近縁とされる3属の合計39種について,Adh, Gpdh, 28S, COI, およびCOII遺伝子の塩基配列をそれぞれ決定し,分子系統学的解析を行なった.その結果,quinaria sectionのショウジョウバエは大きく2つのクレードにわかれ,1つはimmigrans種群,もう1つはそれ以外の7つの種群で構成されることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,材料の収集,解析候補種の選定,cDNA配列決定の技術的問題のチェック,100遺伝子配列決定に必要な情報(遺伝子の種類,PCRプマイマー)の検討を目的にし,ほぼ予定通りの成果を得た.
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今後の研究の推進方策 |
次年度からいよいよ本格的な配列決定を進める.次年度は,約15種のcDNA配列と約40種について100遺伝子座の配列を決定する計画である.それと並行して,公開されているゲノム配列,解読したcDNA配列および100遺伝子配列を用いつつ,新しい分子系統解析システムの開発を進める.
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