研究概要 |
亜熱帯のおよそ30~120メートル水深の海底の白砂地帯は未記載の底生性微細藻類の宝庫であることを予備調査でつきとめた。本研究は,1)今まで盲点として解明されてこなかったこの微細藻類の未解明ハビタットである有光層下部の海底をターゲットとして分類学的,系統学的な研究を実施し,多様性の実態を解明する,2)新しいハビタットの解明により,微細藻類の多様性の理解を格段に進める,3)それぞれの種の進化的な位置を分子系統学的手法によって調査し,これらの種の起源を探るとともに,既存の分類体系の見直しをおこなう,ことを目的としている。 H24年度は薩南諸島沖の水深30-50メートルの海底の砂サンプルを調査対象とした。水深50メートルでも微細藻類は出現したが,30メートルからのサンプルの方が多様性に富んでいた。本調査により,17属37種の培養株を確立し,光学顕微鏡,電子顕微鏡,分子系統学的方法によりそれらの分類学的位置を検討した。現在までに,3種が新属・新種,10種が新種であることが判明し,6種については新分類群の可能性があるため分類学的位置を調査中である(残りは既知種)。調査対象の多くが渦鞭毛藻類であるが,Haramonas sp.(ラフィド藻綱),Amorphochlora sp.(クロララクニオン藻綱)などその他の分類群の微細藻類の新種も発見した。予備調査から予想されたように実際にこのハビタットには高い割合で新分類群が存在することが改めて明らかとなった。中でも新属新種として記載した渦鞭毛藻の1種Bispinodinium angelaceumは1対の内部骨格様繊維構造という既知種には存在しない全く新しい細胞構造(機能は不明)を有する非常にユニークな種であることが明らかとなった。
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