研究課題
基盤研究(B)
トガリネズミ、モグラ、ツパイ類を用いて、四肢運動機能の機能形態学的検討を進めた。骨形状と筋肉量からロコモーション特性の定量的指標化を図るとともに、関節抵抗性を吟味し、運動モデル構築を開始している。サイズの小ささが障害となり、十分なモデル化が完了していないため、引き続き検討と解析を繰り返している。頭蓋については、歯列形態の特性や咀嚼筋の形状・サイズを三次元的な検討対象として、系統性の判別を考慮しつつ、摂食機能を精査した。三次元運動を有限要素法による解析の導入を開始している。また感覚器官では、聴覚装置において、マイクロCTの運用により、中耳形態を完全に三次元化し、生活史との関係を定量的に把握しつつある。また骨化を指標にした発生学的考察が進捗した。無盲腸類以外ではテンレック類やツパイ類、周辺の系統では翼手類や皮翼類、齧歯類、食肉類や偶蹄類を用い、機能システムの定量的な形態比較を進めた。集積される北半球系統の旧食虫類のデータに対して、アフリカ獣類や近傍の系統を比較し、収斂形質が内包する真の機能的意義を解明、収斂の実態に迫ながら対象の特性に合ったデータ化を遂行した。当該年度は、予想以上に南半球真獣類の頭蓋と神経系に関するデータ収集が進み、総括的解析を必要とするに至っている。研究組織の所属する東京大学と京都大学の大学博物館、そして国立科学博物館は、日本有数の研究型自然史博物館であり、すでに立ち上げている拠点形成による多国間自然史共同研究手法を活かし、ベトナム産モグラ類、齧歯類、翼手類の適応形質について、比較検討を進めることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定よりも、大きな進展が見られた。齧歯類や南半球真獣類のインベントリー形成と研究が進んだことが基軸になって、収斂と系統的制約の関係が明確化されてきたといえる。旧食虫類の形態学的多様性の把握が進捗したことで、議論する際の比較基盤が多様化したことが指摘できる。発生学的研究も全体を裏付ける有意義な成果となった。
旧食虫類という概念は、分子系統学の功績であるが、地球規模での真獣類の系統と適応を解明するにあたって、重要で本質的な概念として定着した。本研究組織は旧食虫類という考え方をゼロから提示してきたが、研究成果を蓄積し、マクロ系統としての面白みをつかむことに成功したといえる。ここで研究をさらに具体化、深化させ、旧食虫類の適応戦略を個々の生存戦略の枠組みとして提示していくべき段階となってきた。地球規模での真獣類の進化の動態を解明すべく、今後とも比較・総合的視野をもって形態学的研究を進めていくこととする。
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