研究課題/領域番号 |
24370036
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中坊 徹次 京都大学, 総合博物館, 教授 (20164270)
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研究分担者 |
中山 耕至 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50324661)
甲斐 嘉晃 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (30379036)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 種分化 / 氷河期海洋歴史生物地理 / 系統地理学 |
研究概要 |
本研究は,日本周辺の海産魚および通し回遊魚の現在の分布パターンがどのように形成されたかを解明するものであり,第四紀更新世(約260万年前から約1万年前)の氷期-間氷期サイクルの海洋環境変動が主要因の一つであるという仮説のもとに分析を行ってきた. 寒海性魚類ではダンゴウオ科魚類に焦点を当てて研究を進めた.特にコンペイトウ類で,北西太平洋と北東太平洋の集団に大きい遺伝的分化が認められたほか,オホーツク海と日本海集団の間にも遺伝的・形態的差異が認められ,これらは氷期-間氷期サイクルにより分化が生じた可能性が高い.また,ダンゴウオの日本海集団と太平洋集団にも大きい遺伝的分化を見いだした.今後,より詳細な分析を行う予定である. 暖海性魚類では,コノシロの種内に,深く分化した2つのミトコンドリアDNA 系統が部分的に重複しつつ側所的に存在することが明らかとなった.重複分布域での生殖隔離の有無を調べるために多数のマイクロサテライトDNAマーカーを単離した.アカシタビラメ-デンベエシタビラメでは,前年度はAFLP法を用いて氷期の二次的接触によって生じたと思われる交雑の痕跡を検出したが,より詳細に分析するために,これらについても新規のマイクロサテライトDNAマーカーを単離した.また,スズキ属についてもミトコンドリアDNAとマイクロサテライトDNA分析によって,やはり氷期の二次的接触によって生じたと考えられる交雑の痕跡を見出した. 通し回遊性魚類では,西湖のクニマスの発育に伴う形態変化を詳細に調べてヒメマスと比較し,結果を論文として発表した.また,本栖湖では両種の交雑に由来すると考えられる標本が少数見つかっていたため,より多くの個体についてミトコンドリアDNAを用いて調査したところ,クニマスの遺伝的要素を持つ個体が3割近く見出された.このため,マイクロサテライトDNAによる分析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とする魚類は,標本採集の進行状況に応じて臨機応変に対応できており,分析は滞りなく進んでいる.全体としては見ると,暖海系魚類,寒海系魚類,通し回遊性の魚類ともに十分なデータは得られており,論文化も順調である.最終年には予定通りの計画を遂行できる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
研究対象とする魚種は,暖海系魚類,寒海系魚類,通し回遊性の魚類にわけて研究を進めている.最終的に得られた複数種のデータから,各種の示す分散・分断・個体群拡大等の歴史を重ね合わせて全体としての層序構造を描くことを目標としており,今年度は特に補足的データを収集してデータを強固にするとともに,各研究対象魚のデータをまとめて比較・考察して公表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究資料である魚類標本を入手したが、分子分析が行われていない。これを次年度に行うということで、それにかかる費用を繰り越した。 前年度に入手した魚類標本の分子分析を、繰越金で試薬を購入して行う。結果はすみやかに論文にする。
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