研究課題/領域番号 |
24370038
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
関本 弘之 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミカヅキモ / 性染色体 / 有性生殖 / 進化 / 性決定 |
研究概要 |
単細胞シャジクモ藻類ヒメミカヅキモには、生殖隔離した系統、自殖する系統があり、生殖様式の進化、種分化の実体を捉える上で、非常に適した研究材料である。これまで有性生殖期に関連した多くの遺伝子群がクローニングされているが、これらを統御する接合型特異的なゲノム領域、性決定遺伝子の実体は不明であった。我々は、次世代シーケンサー(Illumina HiSeq 2000)を用いて、+型、-型両性のゲノム解析を進めており、今年度はさらにNextera mate kitを用いて、メイトペアライブラリ(3kb, 5kb, 10kb)の作製を行い、配列決定などを進めた。また、PacBio RSを用いて、ゲノム配列を決定した。 一方で、トランスクリプトームデータをアセンブルして得たcontig配列から、-株ゲノムのみに存在すると思われる2配列を絞り込んだ。そのうち1つの配列のみが、子孫株の-型表現型と完全に連鎖していた。この配列を持つ遺伝子は、転写因子をコードし、-型細胞に特異的に存在していることから、CpMinus1と名付けられた。 CpMinus1のcDNAをHSP70遺伝子プロモーターの下流で強制発現するようなコンストラクトを作製し、+株に導入し6株の形質転換体を得たところ、これらのうち5株は、窒素源欠乏条件において自家接合能を示すようになった。残りの1株は+株と混合することで顕著に接合反応が進行し、-型との混合ではほとんど接合子を形成せず、あたかも-型細胞のような表現型を示した。 以上の結果より、このCpMinus1遺伝子の産物が、-型細胞としての特性を促進し、+型細胞としての特性を抑制するマスター因子である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム解読については、scaffold長がなかなか長くならず難航しているが、一方で、-型特異的な新規遺伝子(CpMinus1)を発見し、その評価を進めており、おおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解読については、platanusを用いたアセンブルを進める。CpMinus1遺伝子の+型細胞への導入効果が完全ではないので、プロモーター領域そのものもCpMinus1ゲノム由来として、再度形質転換を行う。さらに、この遺伝子を含むBACクローンをPCRベースでスクリーニングし、高精度な配列を得る。また、生殖隔離した系統株のtranscriptome解析も進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
-型特異的な新規遺伝子(CpMinus1)の発見と評価までは、当初の予定以上に進展したが、+型特異的なゲノム領域の確定には至っておらず、BACライブラリーのPCRベースでのスクリーニング、ショットガンシーケンス・アセンブルには至らなかった。そのため、当初予定した費用を次年度以降に使用することとした。 BACライブラリーのPCRベースでのスクリーニング、ショットガンシーケンスに使用する。また、生殖隔離した系統株のtranscriptome解析にも使用する。
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