研究課題
単細胞シャジクモ藻類ヒメミカヅキモには、生殖隔離した系統、自殖する系統があり、生殖様式の進化、種分化の実体を捉える上で、非常に適した研究材料である。これまでに得られている概要ゲノムデータおよびトランスクリプトームデータから、-株ゲノムのみに存在し、転写因子をコードするCpMinus1遺伝子が得られている。CpMinus1のcDNAをHSP70遺伝子プロモーターの下流で強制発現するようなコンストラクトを作製し、+株に導入し6株の形質転換体を得たところ、2株は+株と混合することで顕著に接合反応が進行し、-型との混合ではほとんど接合子を形成せず、あたかも-型細胞のような表現型を示したものの、残りの株では完全に性表現の転換は起こらなかった。さらに、-型細胞のように性表現が変化した株について、比較transcriptome解析を行い、これまでに生データを取得した。表現型が揃わない理由として、遺伝子発現に用いたプロモーターが不適切であることが考えられてため、-型細胞のゲノム配列からCpMinus1遺伝子のプロモーターを含む領域を増幅し、新たな遺伝子導入用コンストラクトを作製した。またCpMinus1遺伝子の発現を抑制するために、antisense方向に挿入したコンストラクトを作製した。ヒメミカヅキモには、+型、-型間で接合を行うヘテロタリック株の他に、クローン細胞内で接合を行うホモタリック株が存在しており、接合時にはヘテロタリック株同様の性分化が起こることが示唆されている。ホモタリック株にもCpMinus1のオルソログ遺伝子が存在することが明らかになり、当該遺伝子のクローニングにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
ゲノム解読については、相変わらずscaffold長がなかなか長くならず難航しているが、形質転換体用コンストラクト作製は、難航したものの、何とか成功し、現在、遺伝子導入を進めている。一方で、-型特異的な新規遺伝子(CpMinus1)が、性を持たないと考えられていたホモタリック株からも発見し、その評価を進めており、おおむね順調であると考えている。
ゲノム解読については、PAC BioデータとIlluminaデータのハイブリットアセンブラーの開発を待ち、実行する。CpMinus1遺伝子の+型細胞への導入効果が完全ではないので、プロモーター領域そのものもCpMinus1ゲノム由来として、再度形質転換を行う。CpMinus1を含む-型ゲノム特異的な領域(性決定に関わる領域)とは対照的に、+型としての性表現と連鎖したゲノム領域は明らかになっていない。そこで、親株(NIES-67, 68)の掛け合わせから生じたF1株(各20系統)のゲノム配列をリシーケンシングし、性表現と連鎖した+型特異的な領域を絞り込む。ヒメミカヅキモのホモタリック株におけるCpMinus1オルソログ遺伝子の発現を逆遺伝学的手法により抑制し、機能を解析する。ヒメミカヅキモには、多くの生殖隔離した交配群が存在するが、交配群II-A、II-B、II-C、およびそれらに近縁なホモタリック株のゲノムDNAを、次世代シーケンサーを用いてリシーケンシングし、概要を明らかにする。
ハイブリッドアセンブラーの開発が進んでいないこともあり、+型特異的なゲノム領域の確定には未だ至っておらず、BACライブラリーのPCRベースでのスクリーニング、ショットガンシーケンス・アセンブルには至らなかった。そのため、当初予定した費用を次年度以降に使用することとした。
BACライブラリーのPCRベースでのスクリーニング、ショットガンシーケンス、およびPacBioシークエンスに使用する。また、親株(NIES-67, 68)の掛け合わせから生じたF1株(各20系統)のゲノム配列をリシーケンシングすることに用いる。
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Plant Cell Physiol.
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