研究実績の概要 |
ラン科オニノヤガラ属の近縁3種(アキザキヤツシロラン Gastrodia confusa、クロヤツシロラン Gastrodia pubilabiata、ハルザキヤツシロラン Gastrodia nipponica)間の菌根菌相と菌特異性の比較をした。アキザキヤツシロラン、クロヤツシロラン、ハルザキヤツシロランから検出された菌根菌種数はそれぞれ9, 16, 31種で、おもに腐生性のホウライタケ科(Marasmiaceae)、 クヌギタケ科(Mycenaceae)によって構成されていたが、ハルザキヤツシロランは外生菌根性のベニタケ科(Russulaceae)、ロウタケ科(Sebacinaceae)とも共生していた。さらに3種は同一の菌根菌をシェアしており、近縁種間で菌パートナーの組成や出現頻度は変化するものの、完全なパートナーシフトが生じていないことが明らかになった。さらにアキザキヤツシロランとクロヤツシロランの菌特異性は、ハルザキヤツシロランよりも有意に高いことが判明した。これらのことから、3種の種分化過程で菌特異性レベルは一定ではなく、大きく変動することが明らかになった。一方、3種の各個体の自生する植生タイプと各個体の菌根菌相の関係を多変量解析で検証した結果、竹林で生育する植物個体の菌根菌相は、種の違いに関わらず、他の植生で生育する植物個体の菌根菌相とは有意に異なることが明らかになった。さらにアキザキヤツシロランは竹林にのみ分布することから、竹林に特異的な菌への適応がアキザキヤツシロランの種分化をもたらした可能性が示された。
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