研究課題/領域番号 |
24370041
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
松浦 啓一 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 名誉研究員 (70141984)
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研究分担者 |
瀬能 宏 神奈川県立生命の星・地球博物館, その他部局等, 研究員 (80202141)
本村 浩之 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90433086)
遠藤 広光 高知大学, 自然科学系, 教授 (50284427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 黒潮 / 魚類相 / 流路 / 動物地理 / 障壁 / 運搬 / 分類 / サンゴ礁 |
研究概要 |
屋久島及び周辺海域における熱帯性魚類と温帯性魚類の種組成が黒潮の流路変動によって大きく影響を受けることが予測されている。本年度は「黒潮が障壁となって分散を妨げられている魚類」に加えて、「黒潮によって運搬される魚類」の研究を行った。トカラ列島や与論島、種子島を中心とする九州南部の島々と高知県南西岸に重点を置いて魚類相調査を実施した。これらの調査は,国立科学博物館,鹿児島大学,高知大学,神奈川県立生命の星・地球博物館の協同で行った。その結果、トカラ列島からは日本初記録1種、屋久島からは同島初記録となる20種を採集し、与論島からも日本初記録5種を採集し、論文にまとめて出版した。さらに、与論島の魚類については、600ページを超えるフィールドガイドを出版した。現地調査と平行して,魚類画像10,209件(12887点)をデータベース化した。この中にはダイバーによって提供された画像が8,275件(10,019点)含まれる。 今年度の研究により,従来、九州南部周辺から報告のなかった多数の魚類が発見された。この結果は黒潮流域の魚類相調査が未だに不十分であることを示している。今回、初めて記録された魚類は黒潮によって南方海域から運搬されたものと考えられる魚種であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を通じて屋久島及び周辺海域における熱帯性魚類と温帯性魚類の種組成を明らかにすることができた。その成果は多数の論文を通じて発表した。特に新種や日本初記録あるいは調査海域から初めて確認された魚種が多数に上ることは我々の研究の大きな成果である。また、「硫黄島の魚類」や「奄美群島最南端の島 与論島の魚類」という大きな図鑑を出版し、当該海域の魚類相について、研究者ばかりではなく、ダイバーを含む一般の人たちに理解しやすい形で研究成果を発表したことは本研究の特徴である。最終年度である平成26年度には更に調査を要する海域で補助調査を実施するが、研究成果を発表するための公開シンポジウムを実施して、本研究の取りまとめを行う。このように本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を実施することによって、屋久島及び周辺海域における熱帯性魚類と温帯性魚類の種組成を明らかにできた。今後は日本全国の浅海性魚類相との比較研究を進め、日本の魚類相形成における海流の役割を明らかにすることとする。また、地球温暖化によって浅海性の海産動物の分布状況にも影響が出ていると言われているが、日本周辺の魚類全般にどのような影響があるかについては具体的な研究は行われていない。我々が構築した魚類写真資料データベースや自然史系博物館の魚類コレクションを用いれば、浅海性魚類の分布変遷と地球温暖化の関係を明らかにすることができるであろう。今後の課題として取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の見積額と実際に購入した金額に差額が生じたため。 物品購入に使用する。
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