アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンH1受容体の拮抗薬である。抗ヒスタミン薬は、古くから使用されている第一世代薬と、最近になり開発された第二世代薬に分けられるが、前者は後者に比べて副作用が多い。この副作用は、第一世代抗薬が高い中枢移行性と低い受容体選択性を示すことに起因する。我々は既に第一世代薬とヒスタミンH1受容体の複合体構造を決定し、第一世代薬の低い受容体選択性の原因を解明した。本研究では、第二世代薬とヒスタミンH1受容体の複合体構造を決定し、なぜ第二世代薬の高い受容体選択性の原因を解明し、副作用の少ない新薬の開発に役立つ情報を得ることが目的である。 第二世代薬はヒスタミンH1受容体への親和性が第一世代薬よりも低く、複合体の結晶化は難しかった。本年度は、これまでの研究により作製した第二世代薬を結合して安定化できるコンストラクトを利用し、複合体の結晶化を行った。その結果、複数の第二世代薬とヒスタミンH1受容体の複合体の構造を決定することに成功した。これらの構造では、第二世代薬に特徴的なカルボキシル基が細胞外側に伸びて結合していた。これらの領域は、ヒスタミンH1受容体に固有の構造を有しており、これにより第二世代薬の受容体選択性が高まっていることが明らかになった。
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