研究課題
赤痢菌は粘膜上皮細胞を介して感染・定着し炎症性下痢を引き起こす病原体である。赤痢菌の感染はO157やサルモネラ属菌などと同様に、III型分泌装置と呼ばれる特殊な注入装置を通じてエフェクターと呼ばれる病原因子が宿主細胞に分泌されることで成立する。赤痢菌が宿主内に分泌するエフェクターは約30種類存在し、免疫系や細胞接着に関連する宿主内タンパク質を標的として働いている。TRAF6の活性化を阻害するエフェクタータンパク質OspIと標的分子であるUbc13の複合体構造解析および機能解析を行い、OspIは電荷を持った分子表面と疎水性の分子表面によりUbc13と結合していることを示した。さらに、OspIと他のE2酵素との相互作用を解析することにより、OspIはUbc13に対して高い特異性を持つことを明らかにした。これは、宿主内のE2を感染の拡大に利用する他のエフェクタータンパク質IpaHの反応を阻害しない分子機構であることを示唆する結果であった。また、本研究では宿主カスパーゼ4を特異的に阻害するエフェクタータンパク質OspC3の解析を行った。OspC3の解析ではOspC3のカスパーゼ4に対する結合モチーフをもとにOspC3とカスパーゼ4の複合体構造モデルをin silicoにより予測し、OspC3のLeu-Ser-Thr-Asp-Asn配列がカスパーゼ4の活性ポケットに結合することを示すと共に、それらのアミノ酸残基の変異体を用いた解析を行い、その結合が阻害に関わることを示した。
2: おおむね順調に進展している
赤痢菌エフェクタータンパク質OspIとユビキチン結合酵素Ubc13の複合体構造解析結果がJournal of Molecular Biology誌に掲載され、Featured communicationおよび表紙に選出されるなどOspIに関する構造研究は順調に進展している。また、OspC3に関してCell Host & Microbeに論文発表を行った。他の赤痢菌エフェクタータンパク質の構造研究においても、IpaHの結晶化に成功するなど、順調に研究が進展している。
OspIによるTRAF6の活性化阻害機構の解明を目指し、TRAF6とOspIにより修飾されたUbc13の構造、相互作用解析を行う。また、赤痢菌エフェクタータンパク質IpaHユビキチンリガーゼの単独の結晶化に成功していることから、単独状態および宿主内標的タンパク質との複合体の結晶構造解析を進める計画である。
すべて 2013
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Journal of Molecular Biology
巻: 425 ページ: 2623-2631
doi: 10.1016/j.jmb.2013.02.037.
Cell Host & Microbe
巻: 13 ページ: 570-583
doi: 10.1016/j.chom.2013.04.012.