研究概要 |
本研究は、細胞が物理化学的刺激である高浸透圧をいかに感知するか、その分子メカニズムを解明するため、酵母の複数の膜タンパク質の高浸透圧感知における機能を解析するものである。昨年度は、高浸透圧感知に関わる四回膜貫通蛋白質Sho1がTM2/3面をインターフェイスとした三量体形成面と、TM1/4面を別のインターフェイスとした二量体形成面をもつ、極めてユニークなホモ多量体構造をとることを生化学的解析により明らかにした。本年度はこのSho1多量体構造を、クロスリンク距離の異なる8種類のクロスリンカーを用いた化学クロスリンク法により詳細に解析し、特にTM2, 3の相対的位置関係を明らかにした、また、SHO1経路活性化条件において、Sho1多量体の構造変化が誘導されるかを調べた。SHO1経路に関わる膜タンパク質Hkr1, Msb2, Opy2の活性型変異タンパク質を過剰発現してもSho1多量体の顕著な構造変化は検出できなかった。一方、細胞に高浸透圧刺激を与えるとTM間のクロスリンク効率が上昇する部位が、TM1, 2, 4の3カ所で見つかった。この高浸透圧依存的なクロスリンク効率の上昇はHkr1 Msb2欠失株、Opy2変異株でSho1を発現させた場合も検出でき、他の膜タンパク質に依存せずに高浸透圧によってSho1多量体の構造変化が引き起こされる可能性が強く示唆される。現在、Hkr1, Msb2, Opy2全てが欠失した細胞やSHO1経路に関わる他のシグナル因子の欠失株を用いて、解析を行っている。以上より、本年度の研究では、Sho1多量体が高浸透圧に依存して自立的に構造を変化させる知見を得、Sho1が高浸透圧感知のセンサー機能に中心的な役割を果たす可能性を見いだすことができた。
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