高浸透圧適応において中心的な役割を果たす酵母HOG MAPK経路の活性化には、Sho1、Msb2/Hkr1、Opy2などの膜タンパク質が必須である。昨年度までの研究で、Sho1、Msb2/Hkr1、Opy2はそれぞれ膜貫通領域あるいは細胞外領域を介して結合し、高浸透圧の感知とシグナル伝達に協調して働くことを示した。このうち、Sho1はホモ多量体を形成し、高浸透圧に応答してその構造変化を引き起こす高浸透圧センサーとして働くことを明らかにした。 今年度はMsb2とOpy2の結合が高浸透圧応答に関与する可能性を検証した。まず、Msb2の細胞外にあるHMHドメインはOpy2のCRドメインと結合することがわかった。CRドメインは酵母種のOpy2ホモローグ間で保存性の高い8個のシステイン残基を有している。各システインをアラニンに置換した変異体を作成しクロスリンク試薬を用いた生化学的実験を行ったところ、CRドメインの8個のシステインは4つのS-S結合を形成し、HMHドメインとの結合に必要なコンフォメーションをとることがわかった。またクロスリンク実験などにより、Msb2のHMHドメインとOpy2のCRドメインの結合部位で、高浸透圧刺激により構造変化が誘導されることを見いだした。この知見は、Msb2とOpy2が高浸透圧を感知する共センサーとして働きうることを示しており、高浸透圧センシングの機構解明へのブレイクスルーとなることが期待される。
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