研究課題/領域番号 |
24370055
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 健一 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (50423059)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞情報伝達機構 / 細胞膜ドメイン / ラフト / 1分子観察 |
研究概要 |
細胞膜上の「脂質ラフト」でのシグナル伝達機構を解明するために、ラフトプローブである蛍光ガングリオシドATTO594-GM1やATTO594-GM3の1分子つつの挙動を細胞膜上で追跡した。GM1あるいはGM3の発現していない細胞へ、ガングリオシドプローブを導入し1分子観察を行ったところ、これらの分子はともに短寿命のホモダイマーを形成していた。ガングリオシドは、コレステロールで安定化されるホモダイマーを形成するが、糖鎖間相互作用もダイマー形成には重要であることが明らかとなった。また、すべてのラフトは、すべてのガングリオシドを含むわけではなく、ラフトごとに違う種類のガングリオシドを含むことが明らかとなった。次に、ラフトの大きさや寿命などの情報を得るため、ガングリオシドプローブ1分子の拡散を、超高速カメラ(時間分解能500マイクロ秒)で観察した。結果、ガングリオシドGM1,GM3ともにせまい範囲内に一時停留することなく、非ラフト分子DOPEと同じ速度で拡散していることが明らかとなった。この結果は、ラフトが非常に小さく寿命が短いことを示唆している。しかし、他のラフトマーカーであるGPIアンカー型タンパク質のCD59を架橋して集めて形成された膜ドメイン内では、ガングリオシドプローブは頻繁に一時停留を示していた。これらの結果は、信号を入力する前の細胞膜上では、安定で動かないラフトは存在していないが、細胞刺激後には安定なラフトが形成されることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ガングリオシドGMI,GM3のホモダイマー形成の発見は予想外であり、これにより、ラフト構造の理解が非常に進んだ。また、ガングリオシドの拡散挙動は、細胞刺激前後で大きく異なり、結果はクリアであった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究でガングリオシドのホモダイマーを発見したが、その生理学的意義を明らかにしていく。そのため、ガングリオシドはEGF受容体の活性制御をすることが知られているが、モノマーとダイマーとで活性制御能に差があるのかを1分子観察により明らかにしていく。また、ラフト経由のシグナル伝達機構を解明するため、ラフト内受容体を刺激後に下流のシグナル分子c-Srcの活性化を1分子蛍光エネルギー移動法を用いて可視化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
EGF受容体を蛍光ラベルし、ガングリオシドGM3あるいはGMIの蛍光ブローブと2色同時1分子観察を行う。これらガングリオシドプローブとEGF受容体の共局在期間、頻度を比較する。共局在するようであれば、ガングリオシドのモノマーとダイマーのどちらが共局在しているかを輝点の蛍光強度測定で明らかにする。また、ラフト内受容体刺激後において、1分子蛍光エネルギー移動法により、c-Srcキナーゼ1分子の活性化を可視化する。そのためc-Srcを細胞に発現させ蛍光ラベルし、細胞内に蛍光ATPアナログを導入し、蛍光エネルギー移動を検出する。
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