研究課題
自然免疫は、侵入してきた病原体を最初に攻撃する生体の排除機構である。しかし、非感染時に自然免疫が活性化すると炎症などが引き起こされ生体に多大なるダメージを与える。逆に感染時には速やかに活性化しなければ感染症に陥ってしまう。すなわち、状況に応じて自然免疫は厳密に制御されなければならない。私達は、糖鎖修飾のために必要な糖核酸輸送体の遺伝子のいくつかをショウジョウバエでノックアウトしたところ、senjuと名付けた遺伝子のノックアウト個体では非感染時にも関わらず自然免疫が異常に亢進していることを見出した。自然免疫を制御するシグナル伝達系を調べたところ、Toll経路以外にもJNK, JAK/STAT, MAPK経路なども異常に活性化していることがわかった。次に、Senjuタンパク質によって輸送される糖核酸の種類を決定したところ、UDP-ガラクトースであることがわかった。さらに私達はsenju変異体ではガラクトースを含む糖鎖(ガラクトース糖鎖)が著しく減少していることを見出した。これらの結果はガラクトース糖鎖は自然免疫を抑制していることを示している。では、免疫抑制に働くガラクトース糖鎖は、感染時にも抑制し続けるのだろうか?そこで感染時のガラクトース糖鎖の量を定量したところ、感染時では有意に減少していることがわかった。さらに、Senjuタンパク質を過剰発現させガラクトース糖鎖を増加させたところ、免疫応答が弱まり感染に対し脆弱になった。以上の結果より、ガラクトース糖鎖は、非感染時には免疫反応を抑制することで炎症がおきるのを抑え、感染時には速やかに減少することで自然免疫の急激な活性化を引き起こしていることがわかった。本研究は、感染などの状況に応じて糖鎖が自然免疫を制御することを初めて示した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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Genes Cells
Glycoscience: Biology and Medicine
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10.1007/978-4-431-54836-2_48-1