研究課題/領域番号 |
24370059
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
横山 謙 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (70271377)
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研究分担者 |
今田 勝巳 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40346143)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | V-ATPase / ATP synthase / Bioenergetics / FoF1 / Rotary motor |
研究概要 |
F-ATPase とV-ATPase は、進化的類縁関係にある回転分子モーターである。申請者らによるV-ATPase の構造・機能解析により、F/V-ATPase の回転子や外周固定子を構成するサブユニット間の意外な進化的関連性がわかってきた。また、分担研究者の今田らにより、別種の回転分子モーターであるべん毛の輸送系に F/V-ATPaseに類似した複合体が存在することが示唆されている。回転分子モーターを構成するサブユニット・ドメインから機能性キメラサブユニットおよびキメラ複合体を作成し、サブユニットおよびドメイン間の機能相関性を明らかにする。前年度では、べん毛と V-ATPase のキメラモーターである A3B3J の ATP駆動性回転を、レーザー暗視野観察系により金コロイド粒子を用いて一分子観察した。その結果、軸として完全に機能するものではないことがわかった。一方で、FliJ と同じ構造になる軸タンパク質をV1 の回転子である D サブユニットから作り、A3B3と再構成させたところ、回転子として機能することがわかった。この事により、FliJ 様のタンパク質が回転分子モーターの軸の起源である可能性が示された。また、べん毛モーターの調節因子である CheY の配列を解析したところ、V1-F サブユニットと部分的であるが、相同性が見られた。構造的にもこの部分が似ていることが V1-F の構造解析論文で示されている。以上の結果から、1, FliJ のようなヘリクスからなる棒状のタンパク質が軸の先祖として機能し、2, これにCheY を起源とする球状のタンパク質が会合してV1 の DF 型の軸が分子進化した、ことが推察された。さらにV1-DF 型の軸で分子融合がおこり、F1-ガンマが分子進化したと考える。この軸の分子進化の道筋が正しいならば、V-ATPase から FoF1 が分子進化してきた、すなわち V-ATPase のほうがFoF1 より古いタイプの回転分子モーターとなる。以上の研究成果を、 PLos One 誌上で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A3B3Jの回転観察、および A3B3 と FliJ 様タンパク質との複合体の回転観察に成功し、FliJ が軸として機能しうることを示すことができた。さらに軸に存在する球状部分がべん毛モーターの調節因子である CheY 由来である可能性も示すことができた。以上の成果により、ATP駆動性モーター部であるF1, V1 が、べん毛モータのFliI, FliJ, CheY から分子進化してきたことを示すことができた。以上の成果を論文としてまとめ、PLos One 誌に受理された。回転分子モータの軸の起源に関する重要な仮説を提唱できたことから、当初の目的のかなりの部分が達成されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
回転力を発生される軸の領域を明らかにする。FliJ そのものは軸として完全に機能しないが、V1-D から作られた FliJ-Like (JL) は、軸として機能する。両者の構造は、ほぼ同じであると考えられる。従って、軸として機能―トルクを発生―させる領域が JL にあるはずである。ドメイン交換の手法を用いて、トルク発生に必要な領域を FliJ に導入し、軸として機能する最小単位を同定する。現在のところ、ヘリクスのうち 30 アミノ酸残基の領域を移すと FliJ キメラが軸として働くことが示されている。今後、この領域を絞っていく。以上の研究により、トルク発生の起源を明らかにする。
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