研究課題/領域番号 |
24370060
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柴田 穣 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20300832)
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研究分担者 |
野口 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60241246)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 1分子分光 / エネルギー移動 / FLIM |
研究概要 |
開発した極低温顕微鏡を用いて、植物型の光合成反応中心タンパク質、photosystem Iにおいて、1分子蛍光分光が可能であることが示せた。これまでphotosystem Iについては、液体He温度での1分子分光が主に報告されてきていたが、本研究により初めて、比較的温度の高い90 Kでのphotosystem I単分子の振る舞いが詳細に調べられた。その結果、蛍光強度が数秒程度の時間間隔で強くなったり弱くなったりする、ブリンキングと呼ばれる現象が観測された。現時点でその機構は明らかではないが、タンパク質のコンフォメーション揺らぎと関係していると考えており、非常に興味深い。 緑藻クラミドモナスの生きた細胞を極低温顕微鏡で観測する研究も進展しており、細胞内部での光合成タンパク質分布の不均一性が明らかとなった。2013年度途中から、蛍光イメージの全ピクセルで蛍光スペクトルを取得できるように制御プログラムを改良したため、情報量が飛躍的に増加した。各ピクセルでのスペクトルをガウス関数の和でフィッティングして成分分割し、各成分の空間分布を画像化することも可能となった。 これらの成果は、学会発表、国際会議発表、および論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した極低温顕微鏡により、1分子分光が実現可能であることを示せた。また、全ピクセルで蛍光スペクトルを取得できるように制御プログラムを改良し、スペクトルマッピングも可能となった。このことにより、単細胞緑藻における細胞内部の光合成タンパク質の不均一な分布も分解可能であることも示せた。当初は、共同研究者から緑藻細胞を送ってもらっていたが、当研究室においても緑藻クラミドモナスの培養を開始し、その育成も順調に進展している。 建物の改修工事が遅れていることで、液体Heを使用する実験がまだ開始できていない点が、予定より若干遅れている部分である。
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今後の研究の推進方策 |
photosystem I単分子のブリンキングの機構を解明するため、明状態、暗状態の持続時間の統計、その温度、励起光強度依存性の測定を行う。現時点では、クロロフィルの励起状態を経由した周囲のタンパク質のコンフォメーション変化がブリンキングの原因であると推察しているが、光強度依存性を見ることで、励起状態を経由しているかを調べることができる。温度依存性からは活性化エネルギーの見積もりが可能となり、どのようなコンフォメーション変化が関与しているかを推定できると期待している。 すでに培養を開始しているクラミドモナスで、まずは既報のステート遷移を再現する実験系を組む。それが完成すれば、極低温顕微鏡下でステート遷移前後の光合成タンパク質の空間分布を調べる実験を行う。室温→ステート1に遷移→極低温で測定→室温→ステート2に遷移→極低温で測定、というサイクルが実現できれば、同一細胞でのステート遷移前後のタンパク質分布を調べることができる。このような実験を可能とするため、室温でブラウン運動を抑えることが可能となる媒質の検討などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
遠心機を購入検討していたが、優先度が低かったため、また2013年度分では足りなかったため、次年度に繰り越した。 遠心機を購入する
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