研究課題/領域番号 |
24370062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯野 亮太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70403003)
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研究分担者 |
五十嵐 圭日子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
内橋 貴之 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (30326300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子モーター / 1分子計測 / セルラーゼ / キチナーゼ |
研究概要 |
セルロースやキチンを分解する糖類加水分解酵素であるセルラーゼやキチナーゼはリニアモータータンパク質であることが明らかにされており、レールとなる結晶性セルロースやキチンを加水分解する際に放出される化学エネルギーを利用して連続的に一方向に動く。本研究では、セルラーゼやキチナーゼを光学顕微鏡で1分子観察・操作して直進運動の素過程の可視化を行うとともに運動素過程の負荷依存性の計測により、その化学力学共役機構の詳細を明らかにする。 H25年度は、子嚢菌Trichoderma reesei由来のセルラーゼTrCel7Aのシステイン変異体を蛍光色素Cy3で修飾し、結晶性セルロース分解反応の1分子蛍光観察を行うことに成功した。これにより、結合速度定数、併進運動速度定数、解離速度定数をすべて求めることができた。特に、TrCel7Aの速度定数は結晶性セルロースIとIIIの分解反応でほぼ同じであり、生化学測定でみられるセルロースIとIIIの分解されやすさの大きな違いは、TrCel7Aの反応素過程の速度定数の差が原因ではなく、セルロースIとIIIの疎水性表面の割合の差によるものであることを明らかにした(Shibafuji et al JBC 2014)。 さらに、Serratia marcescens由来のキチナーゼChiAおよびChiBのシステイン変異体を多種作製し、蛍光標識及びビオチン標識でキチン分解活性を保持しているものをスクリーニングした。ChiAについては、1分子蛍光観察による運動測定に成功し、~50 nm/sという運動速度を求めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1分子計測用のセルラーゼおよびキチナーゼの作製は完了した。セルラーゼTrCel7Aについては、1分子蛍光観察によりセルロース分解反応素過程の速度定数をすべて求めることに成功した。またTrCel6Aについても同様に速度定数の計測が進んでいる。またキチナーゼChiAについては、1分子蛍光観察による運動計測に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ビオチン標識したセルラーゼ、キチナーゼを用い、ストレプトアビジン被覆金コロイドやポリスチレンビーズをプローブとして用いた高時空間分解能計測を行う。また、光ピンセットを用い、基質である結晶性多糖との結合力の測定や運動速度の負荷依存性の測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は1分子蛍光計測に注力したため、金コロイド微粒子やポリスチレンビーズの購入に充てる予定の予算を繰り越した。 プローブとして用いる金コロイド微粒子やポリスチレンビーズ、および試料調製用試薬の購入に用いる。
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