研究課題
結晶性セルロースにはいくつかの結晶形が存在する。自然界に存在するセルロースIαを超臨界アンモニアで処理するとセルロースIIIIに変化する。Cel7によるセルロースIIIIの分解速度はセルロースIαのそれに比べ5倍程度大きいことが報告されていた。この成果はセルロース分解の効率を改善する手法として注目されていたが、何故セルロースIIIIがセルロースIαよりも分解されやすいのかは明らかではなかった。本研究ではTrCel7Aの生化学計測、蛍光1分子計測、および高速AFMによる1分子計測を駆使し、セルロースIαとセルロースIIIIの加水分解反応のすべての素過程の速度パラメーターを求めて比較することで、その分解性の違いの原因を明らかにした。まず、セルロースIαおよびIIIIへの結合・解離のタイムコースから、セルロース単位長さ当たりの結合速度定数(kon)、および解離速度定数(koff)を計測した。興味深いことに、konの分布には等間隔ずつ離れた複数のピークがみられた。高速AFMと蛍光でセルロースを同時観察した結果、複数のピークはセルロース微結晶の束の数に対応していることが明らかとなった。また、微結晶1本の太さはセルロースIα、IIIIともに20 nm程度でほぼ同じであった。微結晶1本に対応する最も小さいピークを比較すると、セルロースIαとIIIIでkonに大きな違いはみられなかった。またkoffの測定ではセルロースIα、IIIIともに、遅い解離と速い解離の2成分が観察された。遅い成分はセルロース上を運動・分解してからの解離(koffP)、速い成分は運動・分解を伴わない解離(koffNP)に相当する。セルロースIαとIIIIでkoffPとkoffNPの値や、運動・分解後の解離の割合(約50%)に大きな違いはみられないことが明らかとなった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
J. Biol. Chem.
巻: 289 ページ: 14056-14065
10.1074/jbc.M113.546085
巻: 289 ページ: 31212-31223
10.1074/jbc.M114.598177
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 53 ページ: 10082-10085
10.1002/anie.201403091
Chem. Commun.
巻: 50 ページ: 9443-9446
10.1039/C4CC02574A
生物物理
巻: 54 ページ: 318-320
10.2142/biophys.54.318