研究課題/領域番号 |
24370064
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
養王田 正文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50250105)
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研究分担者 |
関口 博史 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00401563)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シャペロニン / シャペロン / フォールディング / 古細菌 / 構造変化 |
研究概要 |
本研究は、グループ2型シャペロニン(CPN)のリング間及びリング内サブユニット協調作用機構の解明を目的としている。本年度は、昨年度に引き続いて、リング間協調作用解明を中心に研究を行った。野生型サブユニットで構成されたリングと失活型サブユニットのリングからなる非対称CPN(CPN-ASR)を構築することにより、リング間協調作用が必要であるかどうかを明らかにすることができる。昨年度は、循環置換連結CPN(CPN-CPC)を用いたCPN-ASR構築方法を開発し、その機能を解析した。CPN-CPCは2個のサブユニットを連結し, そのN末端95アミノ酸残基を削除してC末端に付加した変異体であり、立体障害により野生型とリングをキメラのリングを形成することはない。ATPase活性欠損サブユニットから構築したCPN-CPCと野生型サブユニットを共発現させ、それぞれに付加したTag配列を利用したアフィニティクロマトグラフィーによる CPN-ASRを構築した。CPN-ASRがATP依存的なタンパク質フォールディング活性を有し、回転運動を行うことから、グループ2型シャペロニンでは、リング間の協調作用は不可欠ではないことが示唆された。しかし、CPN-CPCは、野生型で作成してもATPase活性や変性タンパク質との相互作用などが異常であり、CPN-ASRの機能に影響を与えている可能性がある。そこで、CPN-CPCを用いたCPN-ASRの機能解析を継続して行うとともに、構造への影響が比較的少ない8連結体によるCPN-ASRを構築と解析を行った。その結果、いずれの方法でも昨年と同様な結果が得られ、グループ2型シャペロニンの反応サイクルでは、リング間の協調作用が必要ではなく、独立して機能することが明らかになった。この結果は、グループ2型シャペロニンが1型シャペロニンとは様々な点で異なることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8連結体はプロテアーゼ等により分解されやすいため、CPN-ASRの精製や機能解析が困難であった。このため、CPN-CPCを用いた場合と比較して、良いデータを得ることは出来なかった。また、変異体としてATPase分解能欠損体を用いて実験を行ってきたが、ATP結合能があることから、ATP結合の効果の可能性があるので、リング間協調作用が必要ではないことを証明するには、ATP結合能欠損体を作成して実験を行うことが必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ATP結合能欠損変異体を作成し、これまでに開発した技術を用いて、リング間及びリング内のサブユニット協調作用機構を解明する計画である。グループ1型も含めたシャペロニンの研究において、ATPase結合能欠損変異体の研究はほとんど行われていない。そこで、X線結晶構造から、ATPの結合に関わるアミノ酸の候補を特定し、その変異体のATP結合能を調べることでATPase結合能欠損変異体を獲得する。ATPの結合能は、目的の変異体にK485W変異を導入することで解析する。これまでの研究の結果、K485W変異体はWild Typeとほぼ同じ活性を有するが、ATPまたはADPの結合に伴いTrpの蛍光強度が変化することが明らかになっている。ATP結合に伴うTrpの蛍光変化を解析することで調べることで、ATP結合能の有無を明らかにできる。ATPase結合能欠損変異体を用いて、非対称シャペロニン及びヘテロシャペロニンを構築し、タンパク質フォールディング活性及びDXT (Diffracted X-ray Tracking)によるねじれ運動の解析などを行う。これまでに結果と本年度の結果を総合することで、グループ2型シャペロニンの構造変化・タンパク質フォールディング機構の全貌を明らかにする。
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