ネムリユスリカの幼虫は、体内の完全脱水により無代謝状態となっても生存し再水和により代謝を再開できる。この能力にはG3LEAタンパク質が重要な因子の一つとして関与しており、体内の様々なタンパク質の乾燥誘導凝集を防いでいると考えられている。従来研究において、われわれはネムリユスリカ由来のG3LEAの11残基のアミノ酸モチーフに着目し、これを2回繰り返したG3LEAペプチドを開発してきた。本研究では、PvLEA-22ペプチドが哺乳類細胞内でのアミロイド凝集を抑制できるかどうかを調べた。PvLEA-22を哺乳類細胞に遺伝子導入し、LEAを恒常的に発現する細胞株を樹立した。LEA発現細胞株に、細胞内でアミロイド凝集を形成するEGFP-polyglutamine融合タンパク質を一過発現させた。蛍光顕微鏡でこの細胞を撮像し、EGFP-polyglutamine融合タンパク質(EGFP-pQ)の凝集形成細胞の個数を計測した。その結果、EGFP-pQ遺伝子導入後72h経過すると明確な蛋白質凝集抑制が現れた。以上の結果から、G3LEAの細胞内凝集抑制能には、11-mer LEA motifが重要であることが判明した。 PvLEA-22の乾燥状態における酵素機能保護能を調べるため、in vitroにおいてラクトースデヒロゲナーゼに対して乾燥、再水和後の酵素活性を測定した。その結果、添加したPvLEA-22のモル比増大とともに、乾燥保護剤としての実用に耐える保護能力を示すことが判明した。 PvLEA-22と細胞膜の相互作用を解明するため、PvLEA-22がリン脂質二重膜表面へ結合する過程の自由エネルギープロファイルを評価した。その結果、結合自由エネルギーは18 kcal/molという大きな値をもつことが判明した。
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