研究課題
アミロイド線維の構造や形成機構を理解することは、これらの関わる疾患の病態解明に止まらず、広く蛋白質を理解するために重要である。研究代表者は、アミロイド線維の形成は、「原因蛋白質の過飽和状態からの析出」であることを提案した。本研究では、蛋白質の異常凝集、特にアミロイド線維形成反応を、この提案に基づいて研究する。超音波照射は過飽和を解消する有効な手段であり、昨年度に引き続き、今年度も超音波を用いたアミロイド線維の形成機構を展開した。アミロイド蛋白質として、β2ミクログロブリン、ニワトリ卵白リゾチーム、アミロイドβペプチド、αシヌクレインなどを用いた。①システムの改良:超音波がアミロイド原因蛋白質の過飽和を解消しアミロイドを生成する有効な方法である。これを効率的に行うために、96穴プレートリーダと超音波装置を組み合わせることによって、アミロイド形成を効率よく、迅速に測定する装置HANdai Amyloid Burst Inducer (HANABI)を改良した。今年度は特に、浴槽内の水を脱気することにより、超音波の伝播効率を高めた。アミロイド形成が速まるとともに、96穴プレートの反応が均質化された。②超音波による線維形成の促進:特にβ2ミクログロブリンやニワトリ卵白リゾチームを用いて、アミロイド形成反応のラグ時間の分散について検討し、アミロイド形成反応が本質的に揺らぎの大きな反応であり、主にその原因が核形成段階にあることを明らかにした。③超音波による線維崩壊の促進:アミロイド線維に対して超音波を継続的に照射することによって、チオフラビンTの蛍光強度は減少する。この原因が不定形凝集の形成にあることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者は、「アミロイド線維は、原因蛋白質の過飽和状態からの析出」であることを提案した。本研究では、過飽和や超音波をキーワードとしてこれを証明することを目指した。今年度までにHANABIの改良、アミロイド線維形成における揺らぎの評価、超音波による線維崩壊の発見とその機構、アミロイド形成の熱測定などの研究を進めることができた。これらは世界的に評価される研究であり、アミロイド線維形成における過飽和の役割は、他の研究者によっても受け入れてきている。以上より、本研究は当初の計画以上に親展していると判断する。
次年度は最終年度であり、これまでの研究を総括し、更に発展させるために以下を実施する。①超音波照射システムの改良、②超音波による線維形成の促進、③一線維蛍光顕微鏡によるアミロイド線維形成反応の解析、④アミロイド線維形成の熱測定以上の研究を総合して、過飽和の蛋白質の構造物性における役割、さらには生命科学における役割を考察する。また、「過飽和の生命科学における役割」に関する、新たな概念を構築し、展開する。
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