研究課題
代表者は、「蛋白質異常凝集の統一原理」を提唱した。すなわち、アミロイド線維形成は、短いペプチドや変性した蛋白質が、溶解性を超えることによって析出する場合の、基本構造である。しかしながら、ペプチド溶液はしばしば過飽和となるためアミロイド形成は容易には起きない。このような統一原理によって、アミロイド線維だけでなく、三次元結晶から不定形凝集まで、蛋白質の構造転移を包括して理解することが、本研究の目的である。平成26年度は最終年度であり、これまでの熱測定や超音波を用いた研究を継続して行うと共に、アモルファス凝集とアミロイド線維の競争的形成についての研究を進めた。1.アミロイド至適温度:卵白リゾチームの温度に依存したアミロイド線維形成を、温度を変化させて調べると、アミロイド線維の形成量に至適温度が見られた。また、昇温速度が遅い方がアミロイド線維の形成量は多かった。このような温度依存性は、アミロイド線維と不定形凝集の競争が起きているためと考えられた。2.アミロイドβをはじめとする多くのアミロイド性ペプチドは、大きな蛋白質から切り出された比較的小さなペプチドであることが多い。他方、卵白アルブミンのように大きな蛋白質はアミロイド線維を形成しない。その理由は単に大きな蛋白質はもつれてガラス状態を形成してしまうためと考えられる。卵白アルブミンを用いて、これを検証した。トリプシン分解した卵白アルブミンの混合液を超音波照射下においたところ、40℃付近で極めて効率的にアミロイド線維が形成された。隠されていたアミロイド原性が断片化によって露呈したことを示す。また、高温で急激にアミロイド性は減少したが、これはアモルファス凝集が競争的に進んだためと考えられる。3.以上の実験より、アミロイド線維と不定形凝集の競争にもとづく、蛋白質の一般的な凝集機構を提唱した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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