研究課題/領域番号 |
24370074
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮川 さとみ 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師(常勤) (90291153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | piRNA / 小分子RNA / 発生・分化 / 精子形成 / PIWI / レトロトランスポゾン |
研究実績の概要 |
<GPAT2ノックアウトマウスの解析> 生体内におけるGPAT2の役割を明らかにするために、GPAT2ノックアウト(GPAT2-KO)マウスを作製し、解析をおこなってきた。GPAT2-KOマウスの胎仔期精巣における小分子RNAの解析をdeepシークエンスによって解析した結果、piRNAはほとんど産生されておらず、MILI-KOマウスと比較しても低レベルであった。このことから、GPAT2はpiRNAの産生には不可欠の分子であることが、KOマウスを用いた結果からも明らかになった。さらに、生後の精巣においては、精子形成初期にアポトーシスが生じており不妊になることが明らかになった。
<MVHの変異体マウスを用いたpiRNA生合成過程とMVHの分子機能解析> 生殖細胞特異的に発現するRNAヘリカーゼであるMVH(mouse VASA homologue)は、piRNAの生合成に重要な役割を果たしている。前年度までに、ヘリカーゼ活性Nullの変異体(MVH-HD;-helicase dead)を発現するTgマウスを作製し、MVH欠損マウスに交配して、MVH-HDのみを発現するマウスを作製して解析をおこなってきた。今年度は、このマウスの精巣よりGS細胞の樹立を行なってきた。GS細胞を樹立するためには、DBA2マウスに戻し交配する必要があるが、TgとKOの両アリルをもつDBA2マウスが生まれず、交配に時間がかかっている。何度かGSの樹立を試みたが、樹立までには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MVHのヘリカーゼ活性Nullの変異体マウス由来のGS細胞を作製し、解析をおこなう予定であったが、まだ樹立できていない点で、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
<GPAT2-KOマウスの解析> GPAT2はpiRNAの産生には不可欠の分子であることから、KOマウスの表現型は、MILI-KOマウスと同様に精子形成過程の減数分裂期初期でのアポトーシスであることが予想された。しかし、実際には、予想より早い段階で精子形成が停止していたことから、GPAT2はpiRNA産生における役割だけでなく、別の機能も有すると考えられた。今後は、精子形成過程におけるpiRNA産生以外の機能も調べていく予定である。
<MVHの変異体マウスを用いたpiRNA生合成過程とMVHの分子機能解析> MVHトランスジェニックマウスとMVH欠損マウスを交配して、両性質を持つマウスを獲得し、そのマウス由来のGS細胞を樹立する。GS細胞樹立後に、IAPやLINE1やインプリント遺伝子のメチル化解析、piRNAの網羅的解析、およびMVH結合タンパクの同定やその解析をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年8月までに、piRNA生合成に関与するMVHの変異マウスを、MVHトランスジェニックマウスとMVH欠損マウスを交配して、両性質を持つマウスを獲得し、そのマウス由来のGS細胞を樹立する予定であった。その後、平成27年までに、GS細胞の性質評価、GS細胞を用いた生化学実験、および、結合タンパクの同定と解析をおこなう予定であった。しかし、予想に反し、必要なマウスの獲得が困難であることが判明した。目的達成のため、再度両性質をもつ変異マウスの交配をおこなう必要が生じた。GS細胞の樹立と並行して、あらたに、Tgマウスから直接MVH結合タンパクの同定も試みる必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスの交配およびGS細胞の樹立と培養、IAPやLINE1やインプリント遺伝子のメチル化解析、piRNAの網羅的解析、MVH結合タンパクの同定やその解析をおこなうために予算を使用する予定である。
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