研究概要 |
複製開始反応は、真核細胞においては2段階の制御を受けている。複製時にDNA2本鎖を巻き戻す複製時ヘリカーゼの染色体DNA上の複製開始点へのローディング(pre-RC形成、細胞周期のG1期)と、複製時ヘリカーゼの活性化と複製フォークの確立(S期)。この過程に関わる因子は以下の4種類に大別できる。 1),pre_RCに含まれ、複製フォークには含まれないもの 2).pre-RC、複製フォークの両方に含まれるもの(Mcm2-7) 3),pre.RC、複製フォーク共に含まれないが複製フォーク形成には必要(Sld2,Sld3,Dpb11) 4).pre-RCに含まれないが、複製フォークには含まれる(Cdc45,GINS,Polε他) これまでの解析結果はグループ(3)の因子(Sld2,Sld3,Dpb11)の会合により促進される開始複合体の形成過程そのものが、複製開始・抑制のスイッチとなっており、それらの会合がCDKによるリン酸化で直接制御されていることを示している。開始複合体にはこれらの他、グループ(4)の因子も含まれているが、それらの開始複合体形成における役割は不明である。24年度にいくつか行った解析のうち、グループ(4)因子GINSが開始複合体形成に果たす役割についてまとまった成果が得られた。これまでの解析結果から、GINS-Dpb11の相互作用が開始複合体形成を促進することが示唆されていたが、この点を検証し、実際にそうであることを示すことができた。また、vertebrateのGINS-Dpb11オーソログが同様の機能を持つことも分かった。真核細胞においては、グループ(3)因子のアミノ酸保存度は非常に低いが、24年度に得られた成果は、真核細胞において共通の複製開始機構があることを示しており、今後の複製開始機構の理解に向けて、重要な貢献をなすものであると考えられる(論文投稿中)。
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