研究課題/領域番号 |
24370076
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
広田 亨 公益財団法人がん研究会, がん研修所・実験病理部, 部長 (50421368)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 染色体分配 / プロテアーゼ / セパレース / サイクリン依存性キナーゼ / 活性プローブ / セキュリン / 染色体の分離 / 中期後期移行 |
研究概要 |
細胞は分裂に際し、凝縮した染色体を二分し、それを紡錘体によって二つの細胞に分配する。その一連のプロセスのクライマックスは、中期赤道面に並んだ染色体が「いっせいに」両極に向かって動き出す、「分離の瞬間」である。ところが、こうして染色体が同期性に分離することは、現象としては広く知られているものの、その同期性を生み出す背景は、よく分かっていない。本研究の目的は、染色体の分離の瞬間はいかに規定されているのか、セパレースの活性制御を手掛かりにして解明することである。我々が開発したセパレース活性プローブを用いて解析したところ、セパレースは中期のあいだは活性が抑えられており、後期の直前で、急激に活性化することが判明していた。これに基づき、本年度は、抑制因子セキュリンがセパレースと比して過剰に存在すること、そしてセパレースと結合していない分子から優先的に分解されることによって、中期ではセパレース活性が抑えられていることを見出した。このプローブを細胞内のさまざまな位置においたところ、活性は染色体近傍に限定された。驚いたことに、中期から後期への移行期を生化学的に解析したところ、こうして染色体上で活性化したセパレースは、今度はサイクリンBと結合してサイクリン依存性キナーゼ(Cdk1)の活性を抑制した。つまり、セパレースはプロテアーゼとして働いた直後に、Cdk活性の抑制因子に転じて、染色体分離を促進していることが判明した。これらの観察より、セパレースの活性化は、姉妹染色分体間の結合の解除と、姉妹染色分体の紡錘体極への引き寄せ運動という染色体分離の2つの過程が連動させるスイッチであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画した実験を効率よく進めることができたため、当初の見積もりよりも早く研究が進展した。得られた知見の重要性から、原著論文にまとめ、比較的短期間で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
セパレースの活性化プロファイルで明らかになった、セパレースの超感受的な活性化の背景にある分子メカニズムの解明を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の計画が効率よく進展し、細胞培養に関わる消耗品費の出費が予定よりも少なかった。その文は次年度に繰り越して有効活用する。
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