研究課題
中心子の9回対称性構造は真核生物に広く保存されている普遍的なものだが、その対称性を決定する機構については長く不明であった。我々はこれまでに、中心子の形成初期に、9個のSAS-6ダイマーが会合してカートホイールという9回対称性の放射状構造を形成し、それが微小管形成の足場として働くことで中心子微小管の本数を9本に決定していることを明らかにした。さらに、カートホイールとは別な機構も9回対称性確立に寄与することを明らかにした。本研究課題の目的はその実体を突き止めることである。25年度までに、5-7回対称性の会合体を作る変異SAS-6をクラミドモナスbld12に発現させ、会合性の変化が中心子9回対称性に及ぼす影響は限定的であること、カートホイールの放射状繊維(スポーク)の先端には架橋構造があって、これがSAS-6の会合性の影響を限定的にしている可能性があることを見出した。26年度は、このような微小管に近い構造がカートホイール非依存的な機構を担う実体である可能性をさらに追求するため、カートホイール中央部分が欠失しているbld12においてもこの架橋構造が観察されるかを検討した。その結果、中心子微小管に残ったスポーク先端様突起間を架橋する構造が、ある程度の頻度で観察され、この構造がbld12における中心子微小管を9本前後に安定化し、SAS-6の影響を限定的にするという仮説を支持する結果を得た。また、変異SAS-6と同時に、N末端またはC末端を大きく欠損させたBld10pを発現させて、カートホイールスポークと中心子微小管の結合を弱めたところ、微小管の数は9本前後に、カートホイールは7本前後に分布するようになった。このことから、会合性の影響を限定する要因が中心子微小管そのものにあると推察され、スポーク架橋がカートホイール非依存的機構を担う可能性がさらに支持された。
3: やや遅れている
スポークの架橋構造がカートホイール非依存的機構をになう可能性を支持するいくつかの結果を得たが、決定的証拠はまだ得られていないから。
中心子をクライオ電子線トモグラフィー法によって観察し、スポーク架橋の詳細な構造を明らかにするとともに、その構成タンパク質の候補であるBld10タンパク質の分子構造を解明する。
カートホイール架橋構造の実体を担うと予測されるBld10pの大量調製に予想外の問題が生じたため、その分子構造の解析が遅れている。
Bld10pの大腸菌における大量発現の条件を検討するため、新しいプラスミドベクターの購入、精製用クロマトグラフィーカラムなどの購入にあてる。
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