研究課題/領域番号 |
24370082
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
近藤 久雄 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20205561)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / 膜融合 / p97ATPase |
研究概要 |
ユビキチン結合ドメインUBAを持つp47N末フラグメント(1-170aa)を用いて、ゴルジ体上のp47結合蛋白質を探索した。その結果、55kDaの蛋白質を同定でき、 p55と命名した。p55は、p47全長と結合でき、更に予想外なことにp97との直接の結合性を示した。p55とp97との結合領域を検討した所、p55はp97のC末に結合しており、p97N末に結合する多くのp97結合蛋白質(p47含む)と対照的であった。このことはp55とp47は、p97との結合に際してお互いに競合しないことを意味している。また、p55とp97は、それぞれp47のN末とC末に結合するので、p47との結合に際してお互いに競合しない。以上から、p55-p47-p97-p55という4者複合体の形成が示唆された。これは、生化学的な結合実験からも、p55-beadsを用いたbeads aggregation assayからも確かめられている。 p55に対する抗体を作成し、その抗体を用いて、p55のゴルジ体上の結合蛋白質を検討し、Giantinを同定できた。ゴルジ体膜を可溶化して、蔗糖密度勾配超遠心法で分画くした所、このp55-Giantin複合体は、従来から知られているGiantin-p115複合体とは全く異なるものであることが分かった。 試験内ゴルジ体再構成系を用いて、p55とGiantinに対する抗体の効果を検討した所、これらの抗体はp97/p47によるゴルジ体膜の膜融合を阻害した。よって、p55とGiantinはp97/p47経路の新規必須因子であることが明らかとなった。 以上から、p97-p47複合体は、ゴルジ体膜上のp55-Giantin複合体に結合して、二つのゴルジ体膜を繋ぐ(tethering)役割をすることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p97/p47経路の因子であるVCIP135脱ユビキチン化酵素の基質の同定を通して、p97/p47経路の分子機構の解明、さらには細胞分裂期におけるゴルジ体再構成の機構の解明を目指している。今回の、p97/p47経路の新規必須因子p55の発見は、VCIP135脱ユビキチン化酵素の基質に直接繋がる成果ではないが、p97/p47経路によるゴルジ体膜の融合の分子機構解明に大きく寄与する成果である。特に、p97/p47複合体自身がtethering複合体を形成するということのみならず、そのtethering複合体形成自体がp97/p47経路によるhomotypicな膜融合を保証する分子機構となっており、その発見意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
1.今回同定したp55やGiantinの細胞分裂期における修飾を明らかにする。想定しているのは、リン酸化やユビキチン化である。 2.また、この度発見したゴルジ体中のp55-Giantin複合体に含まれる他の因子も単離同定する。即ち、tethering複合体とSNAREやrab等との間を繋ぐような因子群の単離を狙っている。 3.今回発見したのは、p97/p47経路のゴルジ体におけるtethering複合体であったが、同様なものが小胞体においても存在するかどうか、引き続き探索を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に同定した、p55その結合因子の機能を解明する。 培養細胞を用いた検討が必要であり、さらに各種抗体の作成が必要であると考えられる。そのために、テクニカルスタッフを雇用して対処したい。また、実験の親展具合から、試薬代やプラスティック代が今年度以上に必要である。
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