研究概要 |
Cdk1(別称Cdc2)は、真核生物の細胞周期における分裂期(M期)の「マスター制御因子」とされ、様々なM期タンパク質の共通配列(Ser/Thr-Pro)をリン酸化し、多くのM期現象に関わっている。しかしながら、Cdk1がいかしにてM期の"マスター"制御因子として機能し得るのか、その分子的基盤は明らかではない。本年度は、「Cdk1の「非S/TPモチーフ」のコンセンサス配列の決定とS/TPモチーフとの関係等の解析」に関して以下の成果を得た。 1.ビメンチン,ミオシン,デスミン,Emi2などのin vitroでのCdk1によるリン酸化部位を詳細に解析し、これらのリン酸化部位(S/T)が共通して+2,3位にR/Kを持つ非S/TPモチーフを形成していることを明らかにした。 2.上記の結果をより一般的にするために、位置走査志向ペプチドライブラリーを用いてCdk1によるin vitroキナーゼアッセイを行った。結果として、Cdk1による非S/TPモチーフのコンセンサス配列としてS/T-X_<1-2>-(K/R)_<2-6>(Xは任意のアミノ酸)を同定した。 3.Cdk1によるS/TPモチーフと非S/TPモチーフのリン酸化の度合いを比較した。結果として、下流に多くのK/Rを持つ非S/TPモチーフ[S/T-X_<1-2>-(K/R)_<1-6>]は一般のS/TPモチーフよりも強くCdk1によってリン酸化されることが判明した。 4.ツメガエル卵抽出液を用いて、Emi2やWee1などの多重なS/TPモチーフにCdk1が結合し、同タンパク質に存在する非S/TPモチーフをリン酸化することが示唆された。 以上の結果から、Cdk1の非S/TPモチーフのコンセンサス配列が同定され、そのリン酸化とS/TPモチーフのリン酸化との関係も明らかになった。
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