研究課題/領域番号 |
24370091
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松野 健治 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60318227)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 左右非対称性 / 左右軸 / Wntシグナル / グリピカン / Notchシグナル / 正中線 / ショウジョウバエ |
研究概要 |
動物の器官の左右非対称性は、遺伝的に決定される胚の左右極性にもとづいて形成される。これまでの研究代表者の研究成果によってこショウジョウバエの器官の形態が左右非対称に変化する機構については、理解が進展している。しかし、左右非対称な形態変化に先立って起こる、胚の左右極性の形成機構については未解明のままである。そこで、本研究では、これまでの研究で見落とされてきた左右非対称性形成の初期段階で働く遺伝子や、左右非対称性形成のより早い段階で起こる現象に研究の重点を置くことで、左右極性が形成される機構を明らかにすることを目的としている。平成24年度の研究において、以下のような成果を得た。 (1)胚発生初期に機能している左右極性の形成に必須な遺伝子の探索・同定 左右極性の形成で機能する遺伝子を同定するために、突然変異ホモ接合体から母性効果を除いた際に左右非対称性の異常を示す突然変異を網羅的に探索した。ショウジョウバエ・ゲノムの約20%を含む第二染色体左腕に存在する遺伝子の突然変異系統を樹立した。これらのうちの387系統を調べた結果、突然変異ホモ接合体において、その母性効果を除いた場合にのみ消化管の左右非対称性の異常を示すものを1系統同定することができた。 (2)消化管前半部の左右非対称性形成の初期段階の解明' 消化管前半部の左右非対称性をランダム化する突然変異として同定していたnarigomaの責任遺伝子の同定に成功した。narigomaは、Wntシグナルの構成因子であるグリピカンのコア・タンパク質をコードしている。研究代表者のこれまでの研究から、消化管前半部の左右非対称性形成にはWntシグナルが重要な機能をはたしていることが明らかになっている。したがって、この成果は、これまでの知見を支持するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書で提案した平成24年度の研究計画の大部分を実施できた。その結果、研究の主要な目的である、「胚発生初期に機能している左右極性の形成に必須な遺伝子の同定」についても、その候補を同定することができた。 これのことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、平成24年度に同定した目的の突然変異体の責任遺伝子を同定する。narigoma遺伝子についても、機能の解析を進める。また、平成24年度ではあまり進展しなかった、「消化管後半部の左右非対称性形成の初期段階の解明」について、集中的に研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展が遅れている、「消化管後半部の左右非対称性形成の初期段階の解明」の項目について、以下の実験を行う。 (1)透明化胚を用いて、最初に左右非対称が観察されるステージ12前後の胚後腸の三次元構造のイメージを取得し、左右非対称な部位の有無や、その構造の特徴を解析する。 (2)2光子レーザー顕微鏡を用いて、ステージ12前後の胚後腸の上皮細胞の構造の三次元イメージを取得する。上皮細胞の構造の左右差を解析する。
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