研究課題
動物器官の左右非対称性の形成機構は、進化的に多様であり、未知の左右非対称性形成機構が存在していると予測される。ショウジョウバエでは、胚消化管などの多くの器官において、遺伝的に決定されて左右非対称性が認められる。本研究の目的は、ショウジョウバエの左右非対称の形成機構の初期段階で働く遺伝子に注目し、左右非対称性形成の新規な機構を明らかにすることである。平成24、25年度の研究において、消化管前半部の左右非対称性が正常に形成されるためには、内臓筋でWnt4シグナル活性が活性化される必要があることを明らかにした。しかし、左右非対称性形成におけるWnt4シグナルの作用機序は不明であった。平成26年度において、左右非対称性が形成される過程の内臓筋とその核の動きを、ライトシート顕微鏡を用いてライムラプス観察した。その結果、背側の内臓筋核は正中線に向かって左右対称に移動したが、腹側の核は、両体側ともにからだの右方向に移動した。この左右非対称な内臓筋核の移動は、消化管形態が左右非対称に変化するのに先立って起こる。さらに、Wntシグナルの正常な活性化に必要なdally-like (dlp)遺伝子の突然変異体では、腹側の内臓筋核の移動方向がランダム化した。dlp突然変異体では、消化管前半部の左右非対称性もランダム化していることから、Wnt4シグナルに依存する内臓筋核の左右非対称な移動が、左右非対称な形態変化を誘発している可能性が示唆された。これまでの研究で、消化管前半部の左右非対称性形成に必須な遺伝子として、doctor no(drn)を同定していた。しかし、その作用機構は不明であった。平成26年度の研究から、drnは、ショウジョウバエJAK/STATシグナルを抑制していることを明らかにした。この成果については、現在、論文発表の準備を進めている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Biol. Chem.
巻: 290 ページ: 505-519
10.1074/jbc.M114.616847
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/matsuno/index.html