研究概要 |
本研究はすべての動物門の各動物のミトコンドリアtRNAについて、各コドンを解読するtRNAのアンチコドンを網羅的に解析することにより、動物ミトコンドリアの解読メカニズムを解明し、遺伝暗号システムの成立基盤を探求することを目的とする。動物ミトコンドリアでは大部分の動物門において現在までに6種類の非普遍暗号(UGA,AUA,AAA,AGA,AGG, UAA)が発見されているが、UAAを除く5種類についてはそれらを解読するtRNAアンチコドンが特定の動物種で解析され、アンチコドン1字目(ウォブル位)または2字目に存在する修飾塩基がコドン解読に決定的な役割を持つことが、主として本研究代表者のグループにより解明された。前年度までにすでに、ヒト、ウシ(哺乳動物)、マボヤ(尾索動物)とヤリイカ(軟体動物)のミトコンドリアtRNAの解析を行い、非普遍コドンに対応するtRNAのアンチコドンウォブル位に修飾塩基、5-タウリノメチル(2-チオ)ウリジン(tm5 (s2)U)、5-ホルミルシチジン(f5C)、7-メチルグアノシン(m7G)を同定した。tm5(s2)Uとf5Cは3字目がAまたはGのコドンを限定して解読し、m7GはU,C,A,Gで終わる4種類すべてのコドンに対合することが判明した。未修飾のCをウォブル位にもつMet用のtRNAは、37位が未修飾の場合はAUGだけしか読まないのに対し、そこがt6Aで修飾されているとAUGだけでなくAUAもMetに翻訳することが解明された。ウォブル位の他の未修飾塩基UとAは4コドンと対合し、GはU,C,Aで終わる3コドンと対合することがすでに明らかになっている。これらの知見から、普遍暗号成立以前の初期遺伝暗号においては、塩基修飾システムは存在しなかったと考えられるため、ウォブル位にそれぞれU,C,A,Gをもつ未修飾のtRNAがどのようにコドンを解読し遺伝暗号表を成立させたかの機構が推定できると思われる。
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