研究課題
前年度までの解析により、MHCクラスI分子上に提示される抗原ペプチドの生成に中心的役割を果たしている免疫プロテアソームサブユニットPSMB8遺伝子の二型性は、一部の硬骨魚類で数億年にわたるTrans-species polymorphismを示す一方で、脊椎動物の進化過程で複数回にわたる二型性の喪失と復活を経験したことが明らかになっていた。今年度はこれまでに解析できなかった分類群として、上位条鰭類に着目し特にフグ目各種の解析をおこなった。フグ目に属する7種を解析し、4種からはA, F両型の、残りの3種からはA型のみのPSMB8が確認された。これらの配列はすべてA系統に属し、二型を示す場合でも二型間の配列の違いは1 % 以下で、フグ属の共通祖先の段階で既にF系統は失われており、その後最近になって何度も独立にA系統内でF型が復活し、結果として二型が再現したことが示唆された。以上の結果は非常に強い平衡選択の存在を示している様にみえるが、F系統が失われてから最近になって二型性が復活するまでに要した長い時間は強い平衡選択と矛盾する。そこでフグ目内での塩基置換のパターンを分析したところ、何度も独立に二型が再生したと考えるよりは、二系は持続的に存在し、二型を決定する残基以外の部分で二型間でのsequence homogenizationが生じている可能性が高いことが明らかになった。PSMB8は他の遺伝子では知られていないきわめてユニークが進化過程をたどっていることになる。また、二型の存在と水棲が関連している可能性を検証するため、二次的に水棲になった哺乳類であるバンドウイルカ、カリフォルニアアシカについてPSMB8遺伝子の二型性の有無を調べたがA型しか検出されず、水棲とPSMB8の二型性の相関は支持されなかった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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