研究課題
霊長類の味覚や嗅覚等の化学感覚について分子・細胞レベルの研究を実施した。その結果、TAS2R38、TAS2R16等の味覚受容体の進化過程を明らかにした。ニホンザルの苦味受容体TAS2R38については、一部地域で特異的に正の自然選択が働いていることが示唆された。また、コロブス類のTAS2R38の機能解析を行うことに成功した。苦味受容体TAS2R16については、種間の機能差を生み出す分子メカニズムを同定した。さらに甘味受容体TAS1R2/TAS1R3についてもニホンザルで機能解析を行うことに成功し、ヒトとの種間差があることが示唆された。嗅覚についてはワオキツネザルの前腕臭腺から分泌される物質の同定に季節性があることを示すことができた。さらに味覚受容体や情報伝達物質の発現パターンを様々な年齢のサルで比較することを試みた。一方、霊長類の果実食・葉食を基本とする霊長類の化学感覚の特徴に対する理解を深めることを目的に、食肉目哺乳動物種および鳥類種の味覚受容体について解析をおこなった。まず、肉食・魚食を基本とするイタチ科各種でTas1r1の配列を決定して比較した結果、ユーラシアカワウソでTas1r1が偽遺伝子化していることを発見した。また、花蜜や果物を常食とするメジロとヒヨドリのTas1r1とTas1r3の全配列を確定し、鳥類の中で唯一甘味受容の化学メカニズムが解明されているハチドリと比較したところ、甘味受容の鍵となるアミノ酸が両者の間で異なることが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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